セッション情報 口演

肝移植

タイトル O-177:

B型肝硬変肝移植後ワクチン有効性と肝組織中Stem cell factor-1発現の関連

演者 後藤田 達洋(岡山大学大学院医歯薬総合研究科消化器・肝臓内科学)
共同演者 高木 章乃夫(岡山大学大学院医歯薬総合研究科消化器・肝臓内科学), 八木 孝仁(岡山大学大学院医歯薬総合研究科消化器・腫瘍外科学), 安中 哲也(岡山大学大学院医歯薬総合研究科消化器・肝臓内科学), 山本 和秀(岡山大学大学院医歯薬総合研究科消化器・肝臓内科学)
抄録 【目的】生体肝移植後のB型肝炎再燃防止策として,HBs抗体高力価含有免疫グロブリン(HBIG)と核酸アナログの併用が確立した方法とされている.しかし,これらの治療法は高額であり,より経済的な方法が探索されている.その中でB型肝炎ウイルスワクチンの有用性が報告されている.我々はB型肝硬変肝移植後患者におけるワクチンの有用性を検討し,夫婦間移植ドナー症例で有用であることを報告している.ドナー肝臓における免疫寛容の有無が重要であることが想定され,肝臓での造血機能の検討を行った.【方法】B型肝硬変にて生体肝移植を行った22症例に対して1-3ヶ月毎,最長3年間のワクチン治療を行い,免疫学的成功につき確認した.B細胞免疫としてHBs抗体価,T細胞免疫としてHBs抗原特異的なインターフェロンγELISPOTアッセイを行った.ドナー肝臓における環境の評価として,造血関連サイトカインStem cell factor-1,及びB細胞分化因子PAX-5発現につきリアルタイムPCR法にて検討した.【結果】22例中9例で,HBIG注射6か月後においてもHBs抗体価100mIU/ml以上を維持できていた.これらの症例はその後のフォロー中HBIG補充を必要としていない.ワクチン成功例は高齢・夫婦間ドナー・ドナーHBs抗体高値,であった.成功例ではELISPOTアッセイでも高値であった.生検肝組織中のStem cell factor-1発現に関しては成功5例不成功5例での検討にとどまるが,成功例0.010AU,不成功0.008AU(p=0.028)であり,成功例で高値であった.PAX-5の発現について有意差認めなかった.【結語】肝移植後でも約40%の症例でワクチンは成功,T細胞免疫も誘導されHBIG補充が不要となった.これらの症例は夫婦間ドナーであることが多く,免疫学的に寛容状態にないドナー肝組織での造血亢進が影響している可能性が示された.
索引用語