共同演者 |
池上 徹(九州大学消化器・総合外科学), 今井 大祐(九州大学消化器・総合外科学), 王 歓林(九州大学消化器・総合外科学), 別城 悠樹(九州大学消化器・総合外科学), 松本 佳大(九州大学消化器・総合外科学), 中川原 英和(九州大学消化器・総合外科学), 吉屋 匠平(九州大学消化器・総合外科学), 井口 友宏(九州大学消化器・総合外科学), 二宮 瑞樹(九州大学消化器・総合外科学), 山下 洋市(九州大学消化器・総合外科学), 岡野 慎士(九州大学消化器・総合外科学), 吉住 朋晴(九州大学消化器・総合外科学), 川中 博文(九州大学消化器・総合外科学), 調 憲(九州大学消化器・総合外科学), 前原 喜彦(九州大学消化器・総合外科学) |
抄録 |
【はじめに】生体肝移植術後の合併症としての消化管出血は稀であるが重篤になりうる.生体肝移植術後の消化管出血の危険因子と臨床経過を明らかにする.【対象】2012年までに施行した297例の生体肝移植症例.【検討項目】術後3ヶ月以内に消化管出血を来した症例について(1)発生頻度および臨床背景,グラフト生存率(2)危険因子(3)消化管出血とグラフト不全との関係を検討した.【結果】(1)生体肝移植術を施行した297例中,術後3ヶ月以内に消化管出血を発症した症例は19例(6.4%)に認め,発症は術後平均18±12日であった.出血原因は食道静脈瘤1例,門脈圧亢進症性胃症2例,胃十二指腸潰瘍2例,Roux-en-Y再建部出血7例,小腸出血1例,結腸潰瘍1例,出血源不明5例であった.15例は保存的に自然止血したが,4例はEVL,クリッピング,エタノール局注,開腹止血が必要であった.保存的治療を行った症例のうち6例は止血不能であった.グラフト生存率を検討したところ,消化管出血を呈した症例は1年以内のグラフト生存率の低下を認めた(47.4% vs. 92.8% p<0.001).(2)消化管出血の危険因子を検討するため消化管出血の有無について単変量解析を行った結果,術中出血量>10L(36.8% vs. 10.4%,p=0.004),Roux-en-Y再建(36.8% vs. 12.3%,p=0.009),閉腹時門脈圧>20mmHg(38.9% vs. 9.8%,p=0.002)が危険因子であり,術後因子では術後最高総ビリルビン値>20mg/dl(57.9% vs. 8.3%,p<0.001)との関係が認められた.(3)消化管出血を呈した症例のうち63.2%が出血を呈した日から前後10日以内に最高総ビリルビン値を示していた.さらに,術後最高総ビリルビン値が20mg/dlを超える症例は有意に死亡率が高かった(69.2% vs. 16.7%,p=0.03).【まとめ】生体肝移植後の消化管出血は稀な合併症であるが,グラフト不全を伴うと極めて予後不良である. |