セッション情報 口演

胃機能1

タイトル O-191:

プロトンポンプ阻害薬投与による低胃酸症が胃細菌叢に及ぼす影響:16S rRNA遺伝子解析を用いた検討

演者 津田 歩美(東海大学医学部付属病院総合内科)
共同演者 五十嵐 宗喜(東海大学医学部付属病院消化器内科), 高木 敦司(東海大学医学部付属病院総合内科), 古賀 泰裕(東海大学医学部基礎医学系生体防御学)
抄録 【目的】近年,プロトンポンプ阻害薬(PPI)の普及とともに低胃酸症が増加し,胃内の異常細菌叢の出現が推測されている.我々は,PPI服用者のみならず非服用者(健常者)からも胃液を採取し,これらに含まれる細菌叢を16SrRNA遺伝子解析を用いて網羅的に明らかにする研究を行った.
【方法】被験者は8週間以上のPPI服用者およびPPI非服用の健常者とした.除外基準は3ヶ月以内の抗菌薬投与,消化管切除術の既往,癌や出血性潰瘍の治療中,3ヶ月以内のH. pyloriの除菌とした.被験者から胃液,唾液,便を採取し,それぞれの16SrRNA遺伝子解析のために細菌ゲノムDNAを抽出した.
【結果】これまでPPI服用者12名(男性10名,平均年齢65歳),PPI非服用者20名(男性16名,平均年齢35.6歳)について検討した.胃液の平均pH値は服用者では4.62(中央値3.88)に対し,非服用者の胃液平均pH 3.03(中央値1.87)と比べて高く,平均胃液量は服用者では12.6 mlで非服用者の18.3 mlと比べ少なかった.胃液pH値と,BL寒天培地を用いた培養法で検出できた胃内細菌数との相関を調べたところ,服用者および非服用者ともそれぞれr=0.894(p<0.001),r=0.617(p=0.004)と有意な正の相関が認められた.16SrRNA遺伝子解析において3000個のアンプリコンを分析したところ,pH 1~2の被験者では門レベルではFirmicutes,属レベルではStreptococcus,種レベルではPrevotella sp.が最も多く検出された.
【結論】胃液pHと培養可能な細菌数の間には有意な相関が認められた.今回の16SrRNA遺伝子解析により胃内細菌叢を構成する菌種は従来の培養法よりも,はるかに多種多様な細菌から成り立つと思われその詳細な解析について報告する.
索引用語