セッション情報 口演

消化性潰瘍

タイトル O-201:

抗血栓薬使用者における上部消化管出血の臨床的特徴とNSAIDs併用の影響

演者 五十嵐 裕章(河北総合病院内科)
共同演者 山下 浩子(河北総合病院内科), 尾形 逸郎(河北総合病院内科), 中村 浩(河北総合病院内科), 土家 清(河北総合病院内科)
抄録 (目的)人口の高齢化に伴い抗血栓薬を使用する患者が増加し,消化器科では同薬に関連したと思われる上部消化管出血にしばしば遭遇,ときに生命の危険さえ生じており大きな問題である.今回我々は抗血栓薬使用者の上部消化管出血の臨床的特徴を明らかにし,さらにNSAIDs併用の有無による相違も検討した.(方法)2007年から2012年までに当院で内視鏡を施行した非静脈瘤性上部消化管出血は334例(男:女=220:114,平均年齢71.4歳)で,抗血栓薬使用例95例,非使用例239例であった.このうちNSAIDs(LDAは除く)併用・使用例を除いた各々78例(A群)と184例(B群)において患者背景や臨床的特徴を比較検討し,さらにA群と抗血栓薬+NSAIDs併用の17例(C群)でも同様の検討を行った.(抗血栓薬の内訳は,LDA62,クロピドグレル14,チクロピジン9,シロスタゾール3,ワーファリン17,その他27で,複数投与も31例あった.)(結果)A,B群間の比較では,年齢はA群はB群より高齢で(76.9 vs 66.1)(p<0.001),男性の割合が高かった(58/78 vs 72/184)(p<0.05).また酸分泌抑制薬(PPI,H2RA)併用はA群で多かった(22/78,28.2% vs 25/180,13.9%)(p<0.05).胃・十二指腸潰瘍(GDU)の比率(61/78,78.2% vs 153/184,83.2%),GDUの止血失敗及び再出血(1/61,1.6% vs 10/153,6.5%),胃潰瘍の部位(胃角より上部:胃角+前庭部=32:13(A群),77:41(B群)),内視鏡施行時のHb値(9.3 vs 8.9)は差がなかった.A,C群間では,酸分泌抑制薬併用はA群で多く(22/78,28.2% vs 1/16,6.3%)(p<0.05),Hb値はA群で高かった(9.3 vs 7.8)(p<0.05).GDUの比率や胃潰瘍の部位に差はなかった.(結語)抗血栓薬使用者の上部消化管出血は非使用者に比べ高齢者,男性に多いが,特に止血困難や再出血は多くなかった.また酸分泌抑制薬の併用率は低く出血時貧血がより重篤であったNSAIDs併用例でも低率であり,出血予防薬併用を啓蒙していくことが極めて重要である.
索引用語