セッション情報 口演

胃腫瘍-基礎

タイトル O-205:

EBV陽性胃癌に対する脱メチル化剤の抗腫瘍効果と上皮間葉移行への影響

演者 中村 宗剛(山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学)
共同演者 西川 潤(山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学), 齋藤 真理(山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学), 岡田 李之(山口大学大学院医学系研究科臨床検査・腫瘍学分野), 酒井 幸平(山口大学大学院医学系研究科臨床検査・腫瘍学分野), 末広 寛(山口大学大学院医学系研究科臨床検査・腫瘍学分野), 坂井田 功(山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学)
抄録 【目的】EBV陽性胃癌は,その癌化に異常なDNAメチル化が関与している.これまで我々は,EBV陽性胃癌細胞のDNAメチル化を検索し,腫瘍関連遺伝子において高頻度にメチル化を認めた.近年,プロモーター領域のメチル化を対象とした脱メチル化剤が抗癌剤として注目されている.今回の検討で,我々は脱メチル化剤アザシチジン(Azacitidine:AZA)のEBV陽性胃癌に対する抗腫瘍効果と上皮間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition:EMT)への影響について検討した.
【方法】EBV陽性ヒト胃癌細胞株SNU719とEBV陰性ヒト胃癌細胞株KATOIIIを10μM AZA添加もしくは非添加培地で培養した.SNU719と細胞形態が近似しているためKATOIIIを対象細胞株として選択した.我々は生細胞数計測とMTS assayを用いて抗腫瘍効果を評価し,細胞周期とApoptosisを評価した.また,細胞形態の変化と浸潤能を評価し,Western blottingでEMT関連タンパクの発現量を評価した.
【結果】AZAはSNU719に対してG2/M arrestとApoptosisを誘導し,抗腫瘍効果を示した.未処理のSNU719は血球様の形態であるが,AZA添加培地で培養すると上皮細胞様のmonolayerに形態変化し,浸潤能が有意に低下した.また,AZA添加培地で培養したSNU719はE-cadherinの発現量が亢進し,EMT抑制に特徴的な変化を示した.一方でAZAはKATOIIIに対してApoptosisは誘導せず,EMTも抑制しなかった.AZA添加培地で培養したSNU719ではp73のプロモーター領域が脱メチル化されp73とp21のタンパク発現量が亢進した.以上よりAZAのSNU719に対する抗腫瘍効果とEMTを抑制する機序として,p73の脱メチル化が考えられた.
【結論】脱メチル化剤はEBV陽性胃癌に対してp73の脱メチル化を介したApoptosisとEMT抑制を引き起こす.
索引用語