セッション情報 口演

膵癌 基礎1

タイトル O-217:

Mucinous phenotypeを有する膵癌はGNAS変異を高頻度に有する

演者 細田 和貴(愛知県がんセンター中央病院遺伝子病理診断部)
共同演者 佐々木 英一(愛知県がんセンター中央病院遺伝子病理診断部), 村上 善子(愛知県がんセンター中央病院遺伝子病理診断部), 肱岡 範(愛知県がんセンター中央病院消化器内科), 山雄 健次(愛知県がんセンター中央病院消化器内科), 清水 泰博(愛知県がんセンター中央病院消化器外科), 谷田部 恭(愛知県がんセンター中央病院遺伝子病理診断部)
抄録 【目的】G蛋白αサブユニットをコードするGNASは内分泌疾患や骨軟部腫瘍で異常が指摘されてきたが,近年,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)で特異的に変異を有し,膵管癌では稀であることが報告された.我々はGNAS変異を有する膵腫瘍の臨床病理学的特徴を検討した.【方法】直接塩基決定法とCycleave PCR法を用い,切除された膵腫瘍290例におけるGNASコドン201,KRASコドン12,13,61変異を検討した.腫瘍分類は2010WHO分類に準拠した.【結果】GNAS変異はコロイド癌(67%,2/3),IPMN(64%,39/61),IPMN随伴腺癌(IPMN-associated invasive adenocarcinoma)(38%,11/29)で高頻度に認められた.膵管癌ではGNAS変異は稀であり(1%,1/88),粘液性嚢胞腫瘍(n=10),漿液性嚢胞腫瘍(n=10),腺房細胞腫瘍(n=16),膵内分泌腫瘍(n=52),およびSolid-pseudopapillary neoplasm(n=14)では変異を認めなかった.背景のPanINも検討したところ,GNAS変異は稀であった(3%,2/77).IPMN随伴腺癌をmucinous subtypeとtubular subtypeに分類したところ,mucinous subtypeで高頻度にGNAS変異を認めた(83%(5/6)vs 26%(6/23))(p=0.02).IPMN随伴腺癌とIPMN,膵管癌の間で臨床病理学的特徴を比較したところ,mucinous subtypeのIPMN随伴腺癌とIPMNは共通した特徴を示した.IPMN随伴腺癌における腺癌成分とIPMN成分を各々解析したところ,mucinous subtypeでは両者のgenotypeは一致したがtubular subtypeでは23例中8例で不一致を示した.【結論】IPMN,mucinous subtypeのIPMN随伴腺癌,コロイド癌はGNAS変異膵腫瘍というスペクトラムをなすことが示唆された.これらは既に共通した臨床病理学的特徴を有することが報告されているが,GNAS変異によりさらに一連の腫瘍群をなすとの見解が支持される.
索引用語