セッション情報 口演

膵癌 基礎1

タイトル O-218:

膵癌の上皮間葉転換(EMT)に対する血小板の関与

演者 宮下 知治(金沢大学病院消化器乳腺移植再生外科)
共同演者 田島 秀浩(金沢大学病院消化器乳腺移植再生外科), 正司 政寿(金沢大学病院消化器乳腺移植再生外科), 中沼 伸一(金沢大学病院消化器乳腺移植再生外科), 酒井 清祥(金沢大学病院消化器乳腺移植再生外科), 牧野 勇(金沢大学病院消化器乳腺移植再生外科), 林 泰寛(金沢大学病院消化器乳腺移植再生外科), 中川原 寿俊(金沢大学病院消化器乳腺移植再生外科), 高村 博之(金沢大学病院消化器乳腺移植再生外科), 北川 裕久(金沢大学病院消化器乳腺移植再生外科), 太田 哲生(金沢大学病院消化器乳腺移植再生外科)
抄録 【目的】膵癌の転移は高率に認められ,予後を規定する重要な因子である.その転移を制御することは予後の改善だけでなくQOLの向上にもかかせない.原発巣で増殖した癌細胞は周囲の構造を破壊し脈管内に侵入することによって転移が生じると考えられ,これらは転移の初期段階と考えられる.癌細胞は転移の各段階で免疫担当細胞の攻撃により大部分は死滅すると考えられているが,実際には癌細胞は免疫担当細胞の攻撃から逃避している(免疫寛容).癌細胞が転移・浸潤していくには,癌細胞自身が上皮間葉転換(EMT)を来し,また腫瘍周囲に免疫抑制性の微小環境を構築することが不可欠である.我々はこの環境に大きく影響するTGF-β,VEGF-A,PAI-1に注目し,この3つの因子をkey moleculeと考えているが,これらの因子を含有し放出する細胞が血小板であることを見出した.そこで膵癌における血小板の役割を検討した.【対象および方法】膵癌切除症例40例の標本を用いて腫瘍のEMT部,間質,脈管内,リンパ節での血小板の発現をCD42bの免疫組織学的に検討した.EMTのマーカーとしてはSnailの発現を,免疫担当細胞としてはCD16(NK細胞等)の発現を検討した.【結果】腫瘍部でのCD42bおよびSnailの発現はそれぞれ63%(25/40),85%(34/40)に認められた.CD42b発現例では92%(23/25)にSnailの発現が認められた.CD16の発現は58%(23/40)に認められ,CD42b発現部位ではCD16陽性細胞の浸潤が減少していた.【結語】血小板は癌細胞を被覆し,EMT様の変化や脈管浸潤を誘導し,浸潤・転移に有利な環境を形成している可能性が示唆された.また血小板の被覆部位では免疫寛容が誘導されている可能性が示唆された.このようなことから抗血小板療法が癌治療に対する新たな治療戦略になる可能性が示唆された.
索引用語