セッション情報 口演

膵癌 基礎2

タイトル O-222:

喫煙が膵癌の増殖・浸潤に及ぼす影響とα3ニコチン受容体の関与

演者 安田 里司(奈良県立医科大学消化器・総合外科学)
共同演者 庄 雅之(奈良県立医科大学消化器・総合外科学), 赤堀 宇大(奈良県立医科大学消化器・総合外科学), 島田 啓司(奈良県立医科大学病理病態学), 野見 武男(奈良県立医科大学消化器・総合外科学), 山戸 一郎(奈良県立医科大学消化器・総合外科学), 北東 大督(奈良県立医科大学消化器・総合外科学), 川口 千尋(奈良県立医科大学消化器・総合外科学), 木下 正一(奈良県立医科大学消化器・総合外科学), 西和田 敏(奈良県立医科大学消化器・総合外科学), 長井 美奈子(奈良県立医科大学消化器・総合外科学), 金廣 裕道(奈良県立医科大学消化器・総合外科学), 中島 祥介(奈良県立医科大学消化器・総合外科学)
抄録 【背景】喫煙が膵癌細胞の増殖や転移を促進し,α7ニコチンレセプター(nAChR)が関与することが知られている.近年α3-nAChRもα7-nAChRと同様に細胞内シグナル伝達を促進させることが報告されたが,癌の増殖や転移との関連は不明である.今回,喫煙と膵癌においてα3-nAChRに注目し,喫煙が膵癌の進展に与える影響を基礎的および臨床的に検討した.【方法と結果】(1)膵癌切除標本においてα7及び3-nAChRの蛋白発現を検討したところ,それぞれ95.6%,85.3%と高率に発現を認めた.(2)喫煙関連物質であるニコチン及びNNKが膵癌細胞株Miapaca2の遊走能に及ぼす影響をmigration assayにて検討した.ニコチン,NNKは遊走能を有意に促進した(対照比でニコチン,NNKによって各々52.2%,54.3%促進)が,メチルリカコニチンによるα7-nAChRの選択的阻害あるいは,α7及びα3-nAChRのsiRNAによる選択的ノックダウンにより遊走促進効果は消失した.(3)MTSアッセイにて増殖能を検討した.siRNAでα7あるいはα3-nAChRをノックダウンさせた膵癌細胞株は増殖能が低下した(対照比でα7およびα3-nAChRノックダウンで各々39.2%,27.4%低下.P<0.05).またTUNEL染色にてアポトーシスが増加し(各々37.9%,26.0%,対照では7.4%),Western blotでcleaved PARP,cleaved caspase3の発現が増強しており,caspase3を介したアポトーシスが増加していると考えられた.【まとめ】α7及びα3-nAChRは膵癌検体において高率に発現を認めた.また喫煙に関連する膵癌細胞の転移および増殖能はα7と同様にα3-nAChRにも依存性であると考えられた.【結語】喫煙による膵癌の転移および増殖に,α7のみならずα3ニコチン受容体が独立して重要な役割を持つことが示唆された.ニコチン受容体を標的とした治療が新たな膵癌治療戦略となり得る.
索引用語