共同演者 |
中井 陽介(東京大学消化器内科), 伊佐山 浩通(東京大学消化器内科), 高原 楠昊(東京大学消化器内科), 佐々木 隆(東京大学消化器内科), 梅舟 仰胤(東京大学消化器内科), 松川 美保(東京大学消化器内科), 秋山 大(東京大学消化器内科), 斎藤 友隆(東京大学消化器内科), 川畑 修平(東京大学消化器内科), 濱田 毅(東京大学消化器内科), 水野 卓(東京大学消化器内科), 毛利 大(東京大学消化器内科), 木暮 宏史(東京大学消化器内科), 山本 夏代(東京大学消化器内科), 平野 賢二(東京大学消化器内科), 伊地知 秀明(東京大学消化器内科), 立石 敬介(東京大学消化器内科), 多田 稔(東京大学消化器内科), 小池 和彦(東京大学消化器内科) |
抄録 |
【目的】喫煙は膵癌のリスクファクターとされているが,予後との関係は明らかになっていない.大腸癌においては,KRAS変異型で特に,喫煙は予後不良因子と報告されている.(J Clin Oncol. 2013;31:2016-23).今回,KRAS変異が多いことが知られている膵癌の予後と喫煙及びKRAS変異の関係について後ろ向きに検討した.【方法】当院で切除あるいは化学療法を受けた膵癌症例を対象に,喫煙歴の有無,KRAS変異型・野生型の予後との関連を後ろ向きに検討した.生存期間はKaplan-Meier法,longrank検定で評価し,予後因子についてはCox比例ハザードモデルで検討した.【結果】2009年1月から2013年8月に経験した膵癌のうち,KRAS変異を評価しえた187例(切除47,化学療法140)を対象とした.KRAS変異率は74.3%であった.喫煙群,前喫煙群,非喫煙群は18.2%,31.6%,50.3%であった.KRAS変異型では女性(46.0% vs. 29.0%,p=0.044),遠隔転移例(50.4% vs. 31.3%,p=0.029),CA19-9(374 vs. 136U/ml)が有意に野生型に比べて高かった.切除率(21.6% vs. 35.4%,p=0.081),喫煙(48.2% vs. 56.3%,p=0.403)の有無には有意差を認めなかった.生存期間中央値(MST)はKRAS変異型16.7(95%CI,11.9-21.8)ヶ月に対してKRAS野生型20.3(95%CI,15.8-34.6)ヶ月と長い傾向を認めた(p=0.193).一方,喫煙経験者と非喫煙者のMSTは22.2(95%CI,16.9-27.9)vs. 14.8(95%CI,9.1-19.4)ヶ月と有意差を認めた(p=0.024).喫煙の有無の予後への影響について,KRAS変異別での多変量解析では,喫煙はKRAS変異型においてのみ有意な予後不良因子であった(KRAS変異型HR 1.96[95%CI,1.06-3.68],p=0.032,KRAS野生型HR1.35[95%CI,0.37-5.28],p=0.653).【結論】大腸癌での報告と同様に,膵癌においても,喫煙はKRAS変異型において予後不良因子であった. |