セッション情報 口演

膵癌 基礎2

タイトル O-224:

γセクレターゼ阻害剤を用いた膵癌幹細胞治療についての検討

演者 堀口 繁(岡山大学病院消化器内科)
共同演者 白羽 英則(岡山大学病院消化器内科), 内田 大輔(岡山大学病院消化器内科), 永原 照也(岡山大学病院消化器内科), 岩室 雅也(岡山大学病院消化器内科), 片岡 淳朗(岡山大学病院消化器内科), 加藤 博也(岡山大学病院消化器内科), 高木 章乃夫(岡山大学病院消化器内科), 能祖 一裕(岡山大学病院消化器内科), 山本 和秀(岡山大学病院消化器内科)
抄録 【背景】膵癌は本邦で年間28000人が亡くなる極めて難治性の消化器癌である.術後の高い再発率に加え,抗癌剤治療に高い耐性を有することがその原因である.抗癌剤耐性化には,癌幹細胞化が関与していることが判明しているが,現在使用されている抗癌剤では癌幹細胞に対する効果は弱い.そこで,癌幹細胞をターゲットとした新規治療法が,膵癌の薬剤耐性を克服し,予後を向上できると期待される.本研究では膵癌細胞におけるNotchシグナルの役割を検討するともに,γセクレターゼ阻害剤(GSI)を用いたNotchシグナル阻害による癌幹細胞化抑制について検討した.【方法】膵癌株(BxPC3,KLM,MIA PaCa2,Panc1)にGSI(50nM)とgemcitabine(GEM)(760nM)+GSI(50nM)投与し細胞増殖能をMTTアッセイにて評価した.FlowcytometryでBxPC3のCD44の発現変化を測定し,更にBxPC3,KLMに薬剤投与して5日後にWestern blot法を用いてNotch経路蛋白(NICD,HES1,HEY1)の変化,及びCD44,multidrug resistant protein(MRP)の発現変化を検討した.またOncomine data baseよりHES1,HEY1と膵癌や幹細胞抗原との関連について検討した.【結果】BxPC3,KLM,MIA PaCa2,Panc1はGSI投与で各々細胞増殖能は低下し,低下率は68%,60%,34%,56%であった.GEM+GSIの場合,更に増殖能は低下した.FlowcytometryではGSI投与により37%のCD44の発現低下を認めた.Western blotではGSI投与によりNICD,HES1,HEY1の低下とともにCD44,MRP発現の低下を認めた.Oncomineでは正常膵に比べ膵癌においてHES1,HEY1の発現は亢進し(p<0.001),CD44とMRP(r=0.39 p=0.04),HES1とMRP5(r=0.43 p=0.025)の間に有意な相関関係が認められた.【結論】GSIはNotch経路を阻害することにより膵癌幹細胞化を抑制した.癌幹細胞化抑制により化学療法抵抗性の一因となるMRP発現も低下し,GSIは抗癌剤との併用により化学療法抵抗性を克服する治療薬となる可能性がある.
索引用語