セッション情報 ワークショップ17(消化器病学会・肝臓学会合同)

遺伝性肝胆膵疾患の病態と治療

タイトル 肝W17-6:

小児期に診断した線維性のう胞性肝疾患の長期予後

演者 乾 あやの(済生会横浜市東部病院・こどもセンター)
共同演者 伊地知 園子(済生会横浜市東部病院・こどもセンター), 藤澤 知雄(済生会横浜市東部病院・こどもセンター)
抄録 【背景】線維性のう胞性肝疾患は、胎生期のductal plate remodelingに異常をきたした遺伝性疾患である。臨床表現型にはCaroli病や先天性肝線維症(congenital hepatic fibrosis:CHF)などがあり、のう胞性腎疾患を合併することが多い。最近、のう胞性腎疾患の精査の際に本疾患が発見される症例が増えているが本疾患の認知度は低く、長期予後については不明な点が多い。【目的】小児期に診断した線維性のう胞性肝疾患の長期予後を知る。【対象と方法】対象は1989から2011年までに経験した小児線維性のう胞性肝疾患11例。臨床表現型はCaroli病が2例、CHFが9例。これらの症例について後方視的に臨床経過と予後を解析。【結果】男:女=6:5。発見時年齢は0から11歳(中央値1.5歳)で診断時年齢は0から11歳(中央値2.5歳)で、3例で確定診断までに1年から5年を要した。発見契機はのう胞性腎疾患の合併症精査が4例(36%)、肝機能異常が3例(27%)、肝脾腫、肝腫大、発熱を伴う腹痛、血小板減少が各々1例。観察期間は1から23年(中央値9.5年)で、無治療で経過観察しているのは3例(27%)。進行性門脈圧亢進症は6例(55%)にみられ、このうち難治性腹水症1例と肝肺症候群1例については生体部分肝移植を施行。残りの4例については定期的な内視鏡的静脈瘤結紮術and/or 脾動脈塞栓術を施行。Caroli病2例のうち1例は反復性胆道感染症にて肝移植を施行。転帰は1例が出生直後からの呼吸不全で死亡。それ以外は全例生存。進行性門脈圧亢進症に肝肺症候群を合併した1例では、移植後敗血症、難治性拒絶、腎不全、抜管困難となり、移植後から退院までに6か月を要した。【考察】線維性のう胞性肝疾患に好発年齢はなく、その進行度も様々であった。【結語】線維性のう胞性肝疾患は、門脈圧亢進症や胆道感染症による他臓器への合併症があるため、診療の際には全身の評価を行いながら、適切な時期に必要であれば肝移植を進めるべきである。
索引用語 先天性肝線維症, カロリー病