セッション情報 口演

大腸 発癌 基礎

タイトル O-251:

肥満関連および炎症性大腸発癌モデルにおけるペントキシフィリンの発癌抑制作用

演者 白上 洋平(岐阜大学病態情報解析医学)
共同演者 清水 雅仁(岐阜大学消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大学消化器病態学), 清島 満(岐阜大学病態情報解析医学)
抄録 【目的】循環代謝改善薬として使用されていたペントキシフィリン(PTX)は,TNF-alpha産生や酸化ストレスを抑制する作用を有し,非アルコール性脂肪肝炎や慢性炎症性腸疾患等の病態を改善するとの報告がなされている.また近年,肥満と大腸癌の高い関連性が示されており,今回,肥満関連および炎症性大腸発癌モデルの2系統を用いた実験を行い,PTXの大腸発癌に対する作用について検討した.【方法】動物モデルとしてアゾキシメタン(AOM)を腹腔内投与した肥満糖尿病db/dbマウス,およびAOM腹腔内投与に加え硫酸デキストラン(DSS)を飲水投与したKyoto Apc Delta(KAD)ラットを用いた.KADラットはApc遺伝子に変異を有し発癌物質への感受性が高い.両実験系においてPTXを飲水投与し,非投与群と比較しその影響を検討した.KADラットの系においては経時的に内視鏡による大腸粘膜の観察を行った.【結果】db/dbマウスの系においてPTX投与群で大腸前癌病変aberrant crypt foci(ACF)およびbeta-catenin accumulated crypt(BCAC)の発生が有意に抑制されていた.また,空腹時血糖および血清遊離脂肪酸がPTX群において有意に低値であり,糖および脂質代謝の改善が大腸発癌抑制に寄与した可能性が考えられた.KADラットの系においては内視鏡的に大腸腫瘍の観察および生検が可能であり,解剖時にはPTX群において腫瘍発生数が有意に減少していた.さらに,両実験系のPTX群において細胞増殖マーカーPCNA陽性細胞数は少なく,大腸粘膜の炎症スコアも有意に低値であった.【結論】PTXが肥満関連および炎症性大腸発癌の抑制に有用であることが示唆された.
索引用語