セッション情報 口演

大腸 発癌 基礎

タイトル O-252:

mTOR阻害剤とPDGFレセプターチロシンキナーゼ阻害剤の併用による大腸癌に対する転移抑制効果

演者 弓削 亮(広島大学大学院消化器・代謝内科)
共同演者 北台 靖彦(広島大学大学院消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大学大学院消化器・代謝内科), 品川 慶(広島大学病院内視鏡診療科), 斧山 美恵子(広島大学大学院消化器・代謝内科), 田中 雄一朗(広島大学大学院消化器・代謝内科), 田中 信治(広島大学病院内視鏡診療科), 安井 弥(広島大学病院分子病理学)
抄録 【背景】これまで我々は,大腸癌間質の癌関連線維芽細胞がPDGFレセプターを過剰発現しており,PDGF経路を遮断することにより間質反応が抑制されることを報告してきた.一方,大腸癌においてPI3K/Akt/mTOR経路は重要な増殖シグナル伝達経路のひとつであるが,浸潤・転移に対するmTOR阻害剤の効果は十分に検討されていない.【目的】腫瘍細胞のみならず間質細胞も同時に標的として治療することにより,転移に与える影響を大腸癌動物実験モデルを用いて検討した.【方法】ヒト大腸癌細胞株KM12SM細胞を用いて同所(盲腸壁)移植モデル及び実験的肝転移モデル(脾臓に移植)を作成し,コントロール群,ニロチニブ(PDGFRチロシンキナーゼ阻害剤)単剤投与群,エベロリムス(mTOR阻害剤)単剤投与群,両薬剤併用群に分け28日間経口投与を行った後,腫瘍重量,容積,リンパ節転移,肝転移等を評価した.【結果】同所移植モデルにおいてニロチニブ投与群では腫瘍間質反応の抑制が観察された.一方,エベロリムス投与群では間質反応の抑制は認められなかったが,腫瘍細胞増殖抑制,アポトーシスの増加を認め,腫瘍血管密度が低下していた.併用群においては間質反応,血管新生,細胞増殖の抑制,アポトーシスの誘導を認め,コントロール群と比較して腫瘍の著明な縮小を認めた.肝転移モデルでは肝転移抑制効果は各単剤投与群でも認められたが,併用群において最も顕著であった.また,最近我々は,大腸癌細胞がニロチニブの標的分子のひとつとされるDiscoidin domain receptor(DDR)1を発現していることを見出し,間質反応における重要性を解析中である.【結語】腫瘍細胞増殖の抑制と伴に活性化した間質細胞を抑制することにより,大腸癌の転移を制御できる可能性が示された.
索引用語