セッション情報 口演

大腸 発癌 基礎

タイトル O-254:

がん悪液質の病態形成にがん増殖部位が及ぼす影響についての検討

演者 松山 竜三(康生会武田病院消化器内科)
共同演者 石川 剛(京都府立医科大学消化器内科学), 岡山 哲也(京都府立医科大学消化器内科学), 足立 聡子(京都府立医科大学がん免疫細胞制御学), 木村 礼子(京都府立医科大学消化器内科学), 堅田 和弘(京都府立医科大学消化器内科学), 鎌田 和浩(京都府立医科大学消化器内科学), 内山 和彦(京都府立医科大学消化器内科学), 半田 修(京都府立医科大学消化器内科学), 高木 智久(京都府立医科大学消化器内科学), 八木 信明(京都府立医科大学消化器内科学), 内藤 裕二(京都府立医科大学消化器内科学), 伊藤 義人(京都府立医科大学消化器内科学)
抄録 【背景】がん悪液質は多くのがんの進行期におこるが,膵癌や胃癌といった消化器癌で多く,乳癌などでは少ないとされる.しかし同じ癌腫においても悪液質の発現は患者ごとに様々であり,悪液質形成には癌と生体との相互反応が関わっていると考えられる.今回マウス大腸がん移植モデルを用いて,がんの移植部位の違いが悪液質形成に及ぼす影響について検討した.【方法】マウス大腸癌株colon26をBALB/cマウスの腹腔内に投与し腹膜播種モデルを作成した.また,腹膜播種モデルと同数のがん細胞を皮下移植するモデルも作成し,体重・精巣上体脂肪重量・腓腹筋重量・心筋重量を比較検討した.また,血漿中の各種サイトカインをBioplex arry systemにて,Myostatin・Activin AをELISAにて,さらに筋萎縮に関わる筋特異的ユビキチンリガーゼであるMuRF1・Atrogin-1の腓腹筋および心筋における発現をRT-PCRにて評価した.【結果】非担がんマウスと比較し,担がんマウスでは体重,精巣上体脂肪重量,腓腹筋重量が有意に低下した.特に,腹膜播種モデルにおいてそれらの低下は強く,皮下移植モデルと比較しても有意に低下した.心重量は非担がんマウスと比較して皮下移植モデルでは有意な低下は認めなかったが,腹膜播種モデルでは有意に低下し,心筋中のMuRF1およびAtrogin-1の発現も有意に亢進していた.血漿サイトカインの比較ではIL-6などいくつかの炎症性サイトカンが担がんマウスで有意に高値であった.【考察】近年,がん悪液質においては,脂肪,骨格筋量の低下のみならず,心筋萎縮を来すことが報告されている.本検討において,腹膜播種モデルは皮下移植モデルに比し強く悪液質を誘導し,さらに心筋萎縮も来すことが示された.腹膜播種モデルにおける心筋萎縮に関しては,MuRF1・Atrogin-1の発現亢進が関わっていると考えられた.
索引用語