セッション情報 口演

大腸癌

タイトル O-256:

大腸癌におけるCBP/p300の発現と機能

演者 稲垣 悠二(三重大学大学院消化器内科学)
共同演者 杉本 和史(三重大学大学院消化器内科学), 白木 克哉(三重大学大学院消化器内科学), 爲田 雅彦(三重大学大学院消化器内科学), 浦城 聡子(三重大学大学院消化器内科学), 野尻 圭一郎(三重大学大学院消化器内科学), 小倉 英(三重大学大学院消化器内科学), 篠原 浩二(三重大学大学院消化器内科学), 山本 憲彦(三重大学大学院消化器内科学), 竹井 謙之(三重大学大学院消化器内科学)
抄録 【目的】CBP/p300は転写コアクチベータであり,多くの転写因子と相互作用しターゲットとなる遺伝子の転写を増強することが知られている.CBP/p300はヒストンアセチル化酵素(HAT)活性をもっており,クロマチン構造を変化させることや転写因子をアセチル化することにより転写制御をするとされている.CBP/p300はp53などの癌抑制遺伝子の転写コアクチベータでもあり,CBP/p300の遺伝子変異が発癌,細胞増殖など癌の細胞プロセスに関与しており抗癌剤のターゲットとなる可能性がある.そこで,今回大腸癌におけるCBP/p300の発現とHATの機能を明らかにする事を目的とした.【方法】免疫染色にて大腸癌におけるCBP/p300の発現を確かめた.CBP/p300のHAT活性に対する特異的阻害剤としてC646を使用した.大腸癌細胞株(SW480,colo320,LS180)を用い,C646の増殖,アポトーシスへの影響を検討した.また,C646と抗癌剤やTRAIL併用効果も検討した.【結果】大腸癌組織の免疫染色においてCBP,p300はともに強発現していた.Tissue arrayにおいて癌組織,正常組織ともにすべての組織でCBP,p300の発現を認めた.CBPは,強発現している組織が癌で93.6%,正常組織で25%と正常組織と比べ癌で有意に強く発現していた.p300は強発現している組織が癌で90.5%,正常組織で28.6%と正常組織と比べ癌で有意に強く発現していた.C646は,それぞれの細胞株において濃度依存的に生存率を低下させた.C646と抗癌剤5-FU,oxaliplatinとの併用では抗癌剤の増強効果を軽度認めた.C646とTRAILとの併用ではC646がTRAILの作用を相乗的に増強した.ウエスタンブロッティングではcaspase3は濃度依存的に低下し,アポトーシス抑制分子XIAP,survivinの発現は低下していた.【結語】CBP/p300は大腸癌の発育や増殖に重要な役割をしていると考えられる.CBP/p300を制御することにより大腸癌の進展や増殖をコントロールできる可能性があることが示唆された.
索引用語