抄録 |
【背景と目的】EOB-MRI肝細胞相の乏血性病変の多血化は,治療介入時期として重要であると同時に,肝細胞癌(HCC)は高頻度に肝内再発を来すことから,他部位に出現する新規多血化病変に関してもサーベイランスが必要である.今回,HCC根治後に認めた乏血性病変の多血化と,他部位で出現する新規多血化病変に関する検討を行った.【対象と方法】2008年から2012年までにHCCで加療された833例のうち,HCC根治後にEOB-MRIにて乏血性病変を認め,1年以上経過観察された82例,174結節について1)同部位の多血化に関する因子の検討(結節毎),2)他部位での新規多血化病変出現に関与する因子の検討(症例毎)を年齢,性,肝炎ウイルス,肝線維化,肝予備能,腫瘍マーカー,初回HCC stage,再発回数,乏血性病変の結節径,結節個数,結節径増大の有無の項目で行った.【結果】82例の患者背景は平均年齢68.7歳,乏血性病変の平均個数は2.1個,sizeは9.6mmであった.1)同部位の多血化までの期間は,8.6/23.3/41.0%(1年/2年/3年)であり,結節径別による多血化率は,12mm以上vs未満;20.9/44.1/59.3% vs 5.8/16.7/35.4%,P<0.001,結節の増大による多血化率は,3mm以上vs未満;21.8/41.4/73.9% vs 7.3/18.9/29.9%,P<0.001であった.多変量解析でも多血化に寄与する因子として結節径12mm以上(P=0.01,HR 4.02),結節径3mm以上増大(P=0.02,HR 3.78)が抽出された.2)症例毎の他部位多血化病変出現の頻度は(1年/2年/3年),10.1/33.0/45.5%,同部位の多血化までと比較して,統計学的有意差は認めなかった(15.8/35.5/60.7%,P=0.18).また他部位新規多血化病変と同部位多血化に関する臨床的因子を上記項目で検討したが,両群間で結節径(12.7mm vs 9.1mm P=0.02)以外に差を認めなかった.【考案および結語】EOB-MRIの乏血性病変は,結節径と,結節径増大が同部位の多血化に関与し,さらに他部位の多血化新規病変の出現も念頭にサーベイランスする事が望ましいと考えられた. |