セッション情報 口演

AIH・PBC

タイトル O-284:

原発性胆汁性肝硬変患者における血中LPS値に相関する因子の解析

演者 樋本 尚志(香川大学総合診療科)
共同演者 野村 貴子(香川大学消化器・神経内科), 谷 丈二(香川大学消化器・神経内科), 三好 久昭(香川大学消化器・神経内科), 森下 朝洋(香川大学消化器・神経内科), 米山 弘人(香川大学消化器・神経内科), 正木 勉(香川大学消化器・神経内科)
抄録 【目的】細菌感染がtriggerとなって原発性胆汁性肝硬変(PBC)が発症するという仮説が提唱されている.今回,PBC患者における血中lipopolysaccharide(LPS)値を測定し,血液生化学検査,抗ミトコンドリア抗体(AMA)や組織学的な所見との関連について検討した.【対象と方法】対象はPBC患者18例であり,C型肝硬変患者5例および健常人6例を比較対照群とした.血中のLPS値はELISA法によって測定し,cut-off値を健常人の平均+5SDで設定し,131pg/mlとした.AMAはM2抗体を測定した.LPSの高親和性受容体であるCD14の肝組織における発現は免疫組織化学法によって解析し,発現の程度をなし,軽度および高度と半定量を行って評価した.【成績】対象患者における血中LPS値はPBCで18例中7例(38.9%)が,C型肝硬変で5例中1例(20%)がそれぞれ陽性であった.血中LPS値陽性群と陰性群で血液検査を比較すると,LPS陽性群で血清ALT値およびM2抗体力価が有意に高く(ALT:61.3±282. vs 32.8±12.6 IU/l,p=0.0209,anti-M2:138.6±29.7 vs 74.3±52.5 index,p=0.0098),血清ALP,T-Bilおよび血清IgM値も高い傾向にあった.組織学的にみると,LPS陽性群で門脈域のリンパ球浸潤が高度な症例が有意に多く(42.9% vs 0%,p=0.0429),bridging fibrosis,胆管障害や慢性非化膿性破壊性胆管炎の頻度が高い傾向にあった.次に,肝組織におけるCD14の発現をみると,全例類洞に認められ,CD14の発現が軽度(n=8)であった群と高度(n=10)であった群との間で血中LPS値を比較すると,CD14発現軽度群で98.6±143.4 pg/ml,高度群で132.5±171.8 pg/mlと両群間で差はみられなかった.【結論】PBC患者における血中LPS値は,肝組織における活動性を反映していた.また,AMA力価と血中LPS値とは相関することから,細菌感染がAMA産生のtriggerになっている可能性が示唆された.
索引用語