セッション情報 口演

胆道疾患

タイトル O-309:

IgG4高値の原発性硬化性胆管炎の検討

演者 田中 篤(帝京大学医学部内科学講座)
共同演者 田妻 進(広島大学総合診療医学), 岡崎 和一(関西医科大学内科学第三講座), 坪内 博仁(鹿児島大学HGF組織修復・再生医療学講座), 乾 和郎(藤田保健衛生大学消化器内科), 滝川 一(帝京大学医学部内科学講座)
抄録 【目的】原発性硬化性胆管炎(PSC)とIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)の鑑別には血清IgG4値が有用であるが,PSCでも時にIgG4が高値となる症例が存在し,北米からはIgG4正常値のPSCと比較して進行例が多く予後不良であると報告されている.今回われわれは2012年に行ったPSC全国調査の結果を基に,IgG4高値のPSCの臨床像について検討した.【方法】2012年の全国調査では197例のPSCが集計された.血清IgG4値のカットオフを135mg/dlとすると,IgG4高値(≧135)症例は15例(7.6%)存在した.この15例をIgG4正常例182例と比較検討した.【成績】IgG4高値例は男性10例・女性5例,診断時平均年齢44.1歳,診断時有症状例5例であり,いずれもIgG4正常例と同等であった.診断時血液所見(中央値)は,AST 100U/l,ALT 54U/l,ALP 822U/l,T.Bil 1.3mg/dlであり,IgG4正常例のそれぞれ52U/l,60U/l,757U/l,1.0mg/dlと有意差はなく,その他の血液所見も同等であった.診断時の組織所見(Ludwig分類)では,1/2/3/4期それぞれIgG4高値0/5/2/0例,IgG4正常25/18/16/5例で,IgG4高値例で進行している傾向があったが有意ではなかった(P=0.073).病変部位(肝内・肝外・肝内外),炎症性腸疾患や経過観察中の胆道癌の合併も両群とも同等であった.平均観察期間はIgG4高値2.1±1.7年,IgG4正常2.8±2.0年と短いが,死亡例はIgG4高値/正常それぞれ3例・28例(P=0.374),死亡+移植例は3例・40例(P=0.699)であり,やはり有意な差はなかった.【結論】既報とは異なり,本邦の全国調査の結果ではIgG4高値PSCは正常例と比較して診断時血液検査値や進行度,予後に有意な差はみられなかった.
索引用語