セッション情報 口演

胃内視鏡

タイトル O-323:

内視鏡的止血術を施行した抗血栓療法中の上部消化管出血症例の検討

演者 岸野 真衣子(東京女子医科大学消化器内科)
共同演者 山本 果奈(東京女子医科大学消化器内科), 石川 一郎(東京女子医科大学消化器内科), 中村 真一(東京女子医科大学消化器内科), 白鳥 敬子(東京女子医科大学消化器内科)
抄録 当院で1995年1月から2013年8月末までに内視鏡的止血術を施行した抗血栓療法中の上部消化管出血症例280例について患者背景,病変,出血形態,内服薬,併存疾患,治療と経過について調べ,初回治療後に追加治療を要した群(以下,追加治療群)と,ガイドラインで推奨されているPPI投与を行っていたにもかかわらず消化管出血を来した群(以下,PPI群)について検討を行った.内訳は男性217人,女性63人,平均年齢は68.3歳であった.心疾患,脳血管疾患以外の併存疾患として透析症例を51例(18.1%)認めた.調べられた中でHelicobacter pylori菌陽性率は66.6%であった.抗凝固薬のみ使用症例は93例,抗血小板薬のみ使用症例は143例,併用症例は42例であった.抗血栓薬の種類はアスピリン単剤使用115例(41.1%),ワルファリン単独使用65例(23.2%),アスピリン+ワルファリン併用36例(12.9%),ヘパリン単独使用28例(10.0%),チクロピジン単独使用20例(7.1%),チクロピジン+ワルファリン併用8例(2.9%),アスピリン+クロピドグレル併用5例(1.8%),クロピドグレル単独使用3例(1.1%)であった.出血部位は胃210例,十二指腸62例,吻合部8例であった.出血状態はForrest IIaが146例(52.1%)と最多であった.初回治療は243例(86.8%)に高周波凝固焼灼術を施行,31例(11.1%)にクリップ,6例(2.1%)にヒストアクリルを使用した.追加治療群は40例(14.3%),PPI群は17例(6.1%)でいずれの群も抗血栓療法薬の種類,組み合わせ,Helicobacter pylori菌陽性率は,全体における割合と有意な差はなかった.追加治療群において十二指腸出血の割合が多い傾向であった.またPPI群の35.3%が透析症例であった.当科で経験した症例では外科手術例や死亡例はなかったが,抗血栓療法中の消化管出血は重篤な合併症を引き起こす.リスク回避のためには難治例,予防不応例の更なる検討が必要である.
索引用語