抄録 |
【目的】本研究は,再帰分割分析を用い,胃瘻造設後の生存に関する要因を明らかにし,術後1年での生存予測のモデルを構築することを目的とした.【対象と方法】2007年1月から2013年9月までに当院にて胃瘻を造設した全101例(男性43例,女性58例,平均年齢86.7±3.6歳)を対象とした.101例による生存分析をKaplan-Meiyer法にて行い,術後6か月,1年,2年および3年の累積生存率を算出した.つぎに,1年未満の生存例11例を除き,90例を対象として,予後1年未満の死亡群(33例)と1年以上の生存群(57例)の比較を行った.検討項目は,年齢,性別,生存期間,基礎疾患(脳血管障害,認知症,神経変性疾患の有無),合併症(糖尿病,心不全,心房細動の有無),術前誤嚥性肺炎の有無,術前白血球数,ヘモグロビン,アルブミン,クレアチニン,ナトリウム,カリウム,CRPとした.各項目について2群の平均値の比較をt検定あるいはχ2検定にて解析した.さらに,有意な項目を説明変数に用い,1年生存予測モデルを作成した.【結果】全101例の生存中央値は735日で,累積生存率は6か月74.8%,1年64.8%,2年47.6%,3年34.5%であった.1年未満の死亡群と1年以上の生存群の比較検討では,糖尿病,心房細動,術前誤嚥性肺炎の有無,ヘモグロビン,アルブミン,カリウムにて2群間に有意差が認められた.これらの項目を再帰分割分析に用いた.作成された回帰木では,まず糖尿病の有無で2分され,糖尿病あり→誤嚥性肺炎ありのノードで100%の死亡率となった.もっとも生存率の良好であったノードは,糖尿病なし→アルブミン2.6以上→カリウム4.54未満であった.ROC曲線にてAUCを求めると0.8527であり,正答率,陽性検出率はそれぞれ85.5%,87.7%であった.【結論】1年生存予測には,まず合併症である糖尿病の有無が重要であり,続いてアルブミン値,誤嚥性肺炎の存在が影響するというモデルが作成された.本モデルは視覚的に理解しやすく,胃瘻造設時のディシジョンツリーとして活用できる可能性があると思われた. |