セッション情報 口演

胃腫瘍-臨床-3(内科)

タイトル O-330:

鉄欠乏性貧血を契機とした悪性腫瘍の早期発見

演者 川崎 健太(慶應義塾大学医学部内科学教室)
共同演者 志村 謙次(総合病院国保旭中央病院消化器内科), 中村 朗(総合病院国保旭中央病院消化器内科)
抄録 【背景】鉄欠乏性貧血(IDA)の原因は消化管癌が多く,上部・下部消化管内視鏡を検討することが推奨されている.しかし,それを証明する客観的データが乏しいため,当院の内科外来で鉄欠乏性貧血と診断を受けた患者での癌の有病率,Stageとその予後,治療,癌がない場合には,他のIDAの原因検索を行った.
【目的】外来でIDAが見つかった患者の悪性腫瘍の頻度,診断時のステージ,治療内容,予後に関して客観的データを求めること.
【方法】2010年4月~2012年4月の間に当院内科外来を受診し鉄欠乏性貧血と診断された18歳以上の男性または51歳以上の女性計472名において,上部または下部消化管内視鏡が施行されている患者350名(男性195名,女性155名,平均年齢男性66歳,女性72歳)をレトロスペクティブに追究した.
【結果】IDAに対する当院での上部消化管内視鏡施行率は67.2%,下部消化管内視鏡施行率は31.8%,担癌率は全体で11.0%,上部ないし下部消化管内視鏡を施行され原因検索を行なっているものの中では14.7%であった.癌の内訳は胃癌46.2%,大腸癌44.2%,その他11.5%であった.胃癌はステージIVが37.5%と最も多い一方で,病理学的に内視鏡治療適応となる症例は12.5%に及んだ.治療法に関しては,内視鏡治療が施行された例は2例(8.3%),根治手術が行われたのは14例(58.3%),化学療法単独は6例(25%),BSCは4例(16.7%)であった.大腸癌は病理学的にはステージIIAが多く35%を占めた.StageIIIBは30%,StageIVは17.4%であった.治療法に関しては,根治手術が行われたのは17例(74%),化学療法単独1例(4.3%),BSC4例(17.4%)であった.
【結語】IDAによって発見された消化管悪性腫瘍の多くは治療可能であり,フェリチンはその発見に有用である.そのため,IDAが見つかった場合には必ず上部消化管内視鏡・下部消化管内視鏡を始めとした精査を行うことが推奨される.
索引用語