セッション情報 ワークショップ17(消化器病学会・肝臓学会合同)

遺伝性肝胆膵疾患の病態と治療

タイトル 消W17-7:

遺伝性肝胆疾患に対する肝移植の成績

演者 池上 俊彦(信州大・消化器外科・移植外科)
共同演者 宮川 眞一(信州大・消化器外科・移植外科)
抄録 【はじめに】遺伝性肝胆疾患の中には、治療法として肝臓移植を選択しうるものがある。当科では肝移植を実施しているが原疾患として遺伝性肝胆疾患の割合が比較的大きい。今回当科で施行した遺伝性肝胆疾患に対する肝移植の成績を検討した。【対象と方法】当科における初回肝移植施行例292例のうち、原疾患が遺伝性肝胆疾患のであった65例を対象とし予後について検討した。生体肝移植例でのドナー選択は血族の場合ドナーが保因者ではあっても患者でないことを確認した。【結果】原疾患は家族性アミロイドポリニューロパチー38例、シトリン欠損症16例、アラジール症候群5例、Wilson病2例、Caroli病、Byler病、糖原病、CPA欠損症それぞれ1例であった。小児9例、成人56例、年齢27.9 (0.3~69.4)歳。ドナーは親24例、同胞19例、配偶者11例、子4例、従兄弟、義弟、ドミノが1例ずつで、脳死は4例であった。全体の1、5、10、15年生存率は92.3、85.3、85.3、71.8%であった。小児ではそれぞれ88.9、88.9、88.9、74.1%で、成人は92.8、84.5、84.5、71.3%で有意差は無かった。小児での死亡はByler病で術後17日目にTTPによるものとWilson病で術後12年目に肝不全による2例であった。成人での死亡は11例で原疾患はFAPが9例で死因は、術後9及び10日目にグラフト機能不全、術後2ヶ月でアスペルギルス感染症、術後1年で多臓器不全、1.7年の事故、1.8年の脳梗塞、4.9年子宮癌、14年の低酸素脳症、16年の心不全であり、残りはCaroli病で術後2ヶ月にVODにより、糖原病で術後11年にアルコール性肝障害であった。FAP例の死亡例のうち3例ではFAP発症後移植までに5年以上が経過していた。成人例のFAPとFAP以外の遺伝性疾患の1、5、10、15年生存率はそれぞれ92.1、80.2、80.2、68.7%および94.1、94.1、94.1、82.4%で有意差は無かった。【まとめ】遺伝性肝胆疾患に対し肝移植を施行した例での成績は比較的良好であったが、改善の余地もある。
索引用語 肝移植, 遺伝性疾患