セッション情報 口演

食道静脈瘤治療

タイトル O-351:

内視鏡的食道静脈瘤硬化療法における合併症と長期予後の検討

演者 奥本 和夫(山形大学医学部消化器内科)
共同演者 冨樫 整(山形大学保健管理センター), 水野 恵(山形大学医学部消化器内科), 勝見 智大(山形大学医学部消化器内科), 冨田 恭子(山形大学医学部消化器内科), 佐藤 智佳子(山形大学医学部消化器内科), 西瀬 雄子(山形大学医学部消化器内科), 渡辺 久剛(山形大学医学部消化器内科), 齋藤 貴史(山形大学医学部消化器内科), 上野 義之(山形大学医学部消化器内科)
抄録 【はじめに】内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(EIS)は再発の少ない有効な治療である.当科では肝予備能良好で肝癌の門脈浸潤のない症例には施行するようにしている.EISは時に合併症を生じ,その頻度はEVLに比べて高い.またEIS,EVL長期予後についても明らかでない.今回我々はEIS症例の長期予後とその合併症について検討したので報告する.【方法】症例は1991年1月から2006年3月までに当科にて食道静脈瘤の治療を行い,経過を追えた184例(男性118例,女性66例).EISをおこなった128例(年齢65.5±11.8歳),EVLを行った56例(年齢62.2±12.8歳)にわけて検討した.合併症については,2003年1月から2013年6月までにEISを施行した155例(464件)について検討した.【成績】EIS群の平均生存期間は70.5ヶ月,EVL群の平均生存期間が26.3ヶ月とEIS群のほうが有意に生存期間が長かった(p<0.0001;Logrank test).約2割の症例は10年以上生存し,約1割の症例は15年以上生存していた.また,肝硬変の原因による分類では,各疾患別で生存率に有意差は認めなかった.合併症は8症例(粘膜下血腫2例,狭窄3例,門脈血栓2例)であった.合併症群とその他の症例では,男女比,年齢,F因子,肝硬変成因,アルブミン値,T-bil,血小板数,PT%,ICG15分値,Child分類,肝細胞癌合併において有意差はなかったが,合併症群にはアルコール性肝硬変が多い傾向があった(p=0.059).【考察】EVLは肝予備能が低下している症例に行っているため,有意に生存率が低いと考えられた.症例によっては10年以上生存する症例もあり,生存期間が2年以上期待できる症例には積極的にEISを行うべきであると考えられた.また,合併症については,アルコール性肝硬変症例に合併症を生じやすい傾向があったが,リスク症例を予知することは困難と思われた.あらゆる合併症を念頭におき,無理のない慎重な治療が必要であると考えられた.
索引用語