セッション情報 口演

大腸 その他2

タイトル O-359:

消化管GVHDにおけるOsteopontinの役割

演者 南 尚希(京都大学消化器内科)
共同演者 吉野 琢哉(京都大学消化器内科), 武田 康宏(京都大学消化器内科), 山田 聡(京都大学消化器内科), 本澤 有介(京都大学消化器内科), 松浦 稔(京都大学消化器内科), 仲瀬 裕志(京都大学消化器内科), 上出 利光(北海道大学遺伝子病制御研究所)
抄録 【目的】同種造血幹細胞移植は血液悪性腫瘍に対する根治的治療法である.しかしながら,移植後の急性移植片対宿主病(GVHD)中でも,消化管GVHDは重篤化すると致死的である.Osteopontin(OPN)は,活性化Tリンパ球より分泌されるサイトカインであり,炎症,発癌,感染症など種々の免疫応答に関与する.しかしながら,消化管GVHDにおけるOPNの果たす意義については,未だに明らかではない.今回我々はマウスGVHDモデルを用い,OPNの消化管GVHDにおける役割について検討した.
【方法】(1)OPN knockout(OPN KO)マウス又はC57BL/6(B6)マウスの骨髄細胞(5×106個)及び脾細胞(1×107個)を,13Gyのγ線照射を行ったB6D2F1(BDF1)マウスに移植し,GVHDモデルマウスを作製.(2)移植後,連日,マウスGVHD Scoreを用い,臨床学的に評価した.移植後7日目に腸管組織を摘出し,GVHD腸炎を組織学的に評価した.TUNEL染色にて,腸管上皮細胞のアポトーシス細胞数について検討した.(3)血清中の炎症性サイトカインをcytometoric beads array法を用い測定,腸管組織中の炎症性サイトカインの遺伝子発現についてsemi-quantitative PCR法で検討した.(4)脾臓中CD8+T細胞におけるFas ligandの発現についてflow cytometryを用いて検討した.
【結果】(1)OPN KO群(OPN KO→BDF1)ではB6群(B6→BDF1)に比べ移植後生存率が有意に低く,GVHDスコアも有意に高値であった.(2)OPN KO群ではB6群に比べ有意に組織学的炎症スコアが高く,腸管上皮細胞でのアポトーシス細胞数の有意な増加を認めた.(3)OPN KO群では血清中IFN-γが有意に上昇,小腸におけるTNF-α,IFN-γ,Fas ligandの遺伝子発現が有意に増強していた.(4)OPN KO群の脾臓中CD8+T細胞におけるFas ligandの発現は,B6群に比べ有意に増強していた.
【結論】OPN KO群において消化管GVHDの増悪を認めた.OPNは消化管上皮細胞のアポトーシスを抑制することで,消化管GVHDに防御的に働くことが示唆された.
索引用語