セッション情報 口演

膵炎 基礎

タイトル O-367:

次世代シークエンサーを用いた膵炎関連遺伝子の解析

演者 中野 絵里子(東北大学病院消化器内科)
共同演者 正宗 淳(東北大学病院消化器内科), 粂 潔(東北大学病院消化器内科), 下瀬川 徹(東北大学病院消化器内科)
抄録 【目的】急性膵炎,慢性膵炎のいずれもアルコールが最多の成因であるが,原因不明の特発性や家族性,遺伝性膵炎の症例も存在する.これまでにPRSS1遺伝子,SPINK1遺伝子,CTRC遺伝子異常が報告されているが,家族歴の濃厚な遺伝性膵炎の約30%において原因遺伝子が不明であり,いまだ明らかとなっていない膵炎関連遺伝子異常の存在が考えられる.近年,新たな疾患関連遺伝子の解析ツールとして次世代シークエンサーが注目されている.我々は,ヨーロッパやインドのグループとの共同研究で,カルボキシぺプチダーゼA1(CPA1)遺伝子の機能喪失型変異が慢性膵炎,特に若年発症の慢性膵炎と関連することを報告した(Nature Genetics, 2013).カルボキシぺプチダーゼにはA2(CPA2),B1(CPB1)などのアイソフォームが存在する.今回,次世代シークエンサーによる解析で検出されたカルボキシぺプチダーゼ遺伝子変異と,慢性膵炎との関連を検討した.【方法】当科にて診断した特発性慢性膵炎患者を対象とし,膵消化酵素などのターゲットを含む68遺伝子をカバーするHaloplexTM target enrichment(Agilent Technologies社)により網羅的解析を行い,Miseq(illumine社)でシークエンスを行った.検出された遺伝子変異に関して,慢性膵炎患者及び健常者との頻度を比較検討した.本研究は東北大学医学部倫理委員会のもと,本学遺伝病学分野との共同研究として行った.【結果】CPB1遺伝子にc.828C>T(p.A276A)変異,c.622G>A(p.D208N)変異,c.694T>C(p.F232L)変異を検出した.非同義変異のc.622G>A(p.D208N)変異,c.694T>C(p.F232L)変異に関しての検討では,患者群と健常者群間で有意差は認めなかった.【結論】CPB1遺伝子変異と慢性膵炎との間に明らかな関連は認めなかった.次世代シークエンサーを用いた網羅的解析により,疾患関連遺伝子変異の候補を効率的に抽出,検討することが可能であった.
索引用語