セッション情報 口演

NASH,NAFLD 2

タイトル O-404:

社会貢献インセンティブ‘Donations for Decreased ALT(D4D)’を動機づけにしたNAFLD治療―肥満と飢餓の同時撲滅を目指して―

演者 角田 圭雄(京都府立医科大学消化器内科学)
共同演者 田中 斉祐(市立奈良病院消化器肝臓病センター), 竹谷 祐栄(市立奈良病院消化器肝臓病センター), 金政 和之(市立奈良病院消化器肝臓病センター), 西村 健(京都府立医科大学消化器内科学), 山口 寛二(京都府立医科大学消化器内科学), 光吉 博則(京都府立医科大学消化器内科学), 南 祐仁(京都府立医科大学消化器内科学), 安居 幸一郎(京都府立医科大学消化器内科学), 内藤 裕二(京都府立医科大学消化器内科学), 伊藤 義人(京都府立医科大学消化器内科学), 吉川 敏一(京都府立医科大学消化器内科学)
抄録 【目的】NAFLD/NASHに対する食事運動療法において有効な動機づけ手法が求められる.一方,国際連合世界食糧計画(WFP)は,食糧欠乏国への食糧援助と天災などの被災国に対して緊急援助を施し,経済・社会の開発を促進する国際連合の機関である.そこで,NAFLD患者に食事運動療法を行い,ALT値の低下度に応じて研究費からWFPの学校給食プログラムへ寄付を行うという社会貢献をインセンティブとした動機づけが有用か否かを検討した.【方法】ALT 31 IU/L以上を示すNAFLD 25例を無作為に次の二群に分けた.対照群:通常の食事運動療法群,寄付群:通常の食事運動療に加えて,12週間のALT低下値を算出し,ALT低下値に応じて研究費から寄付を行う群とした.エントリー時にALT 1 IU/L低下について1ドルをWFPの学校給食プログラムへ寄付することを患者へ説明し,同意を得た.結果は中央値[範囲]で示した.【成績】対照群13例,寄付群12例のうち,drop outした寄付群の1例を除く24例を解析対象とした.ALT値は対照群では治療前78[36-140]IU/Lから12週後79[34-169]IU/Lへと変化なく(p=0.780),寄付群では治療前92[51-164]IU/Lから12週後60[42-119]IU/Lへと有意に低下した(p=0.013).体重は対照群が70.6[47.0-143.0]から68.5[45.0-149.0](p=0.944),寄付群が70.9[65.0-108.9]から67.0[64.0-104.0](p=0.161)と両群ともに有意差を認めなかった.WFPへの寄付金総額は316ドルとなり,約30人分の子供の1か月の給食費に充当できた.【結論】NAFLD患者の食事運動療法においてALT値の改善度に応じた寄付という社会貢献インセンティブを動機づけにした本療法はALT値の有意な低下が得られた上に飢餓地域の子供たちに学校給食を提供し,社会貢献を果たすことができた.
索引用語