セッション情報 口演

B型肝炎 再活性化

タイトル O-415:

炎症性腸疾患におけるB型肝炎ウイルス再活性化に関する検討

演者 野間 栄次郎(福岡大学筑紫病院消化器内科)
共同演者 植木 敏晴(福岡大学筑紫病院消化器内科), 光安 智子(福岡大学筑紫病院消化器内科), 大塚 雄一郎(福岡大学筑紫病院消化器内科), 簑田 竜平(福岡大学筑紫病院消化器内科), 丸尾 達(福岡大学筑紫病院消化器内科), 松村 圭一郎(福岡大学筑紫病院消化器内科), 矢野 豊(福岡大学筑紫病院消化器内科), 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院消化器内科)
抄録 [背景]炎症性腸疾患(IBD)におけるB型肝炎ウイルス再活性化の頻度や病態などはいまだ不明な点も多い.当科の炎症性腸疾患におけるB型肝炎ウイルス再活性化について検討した.[対象と方法]2012年に当科に通院したクローン病428例,潰瘍性大腸炎408例,計836例を対象とし,肝機能およびB型肝炎再活性化について検討した.[結果]B型肝炎ウイルスマーカーでHBs抗原,HBs抗体,HBc抗体すべて測定している症例は626例(74.9%),HBs抗原のみ測定が61例(7.3%),HBs抗原とHBs抗体のみが5例(0.6%),HBs抗原とHBc抗体のみが45例(5.4%),すべて測定していないのが99例(11.8%)であった.HBs抗原陽性は9例(1.1%)であった.HBs抗原陰性でHBs抗体陽性かつHBc抗体陽性は54例(6.5%),HBs抗体のみ陽性31例(3.7%),HBc抗体のみ陽性15例(1.8%)で,既感染パターンは計100例(12.0%)であった.HBs抗原陽性者を除いた既感染者をB型肝炎ウイルスマーカー陰性者と比較すると,それぞれ平均年齢は48.2歳と39.5歳,ASTが48.1IU/mLと22.1IU/mL,γ-GTが45.2IU/mLと31.9IU/mLで既感染者は陰性者に比し有意に高値であった(p<0.001,p=0.024,p=0.025).ALTは有意差みとめなかったが41.6IU/mLと22.1IU/mLと高い傾向を認めた(p=0.061).またAlbは3.5mg/dlと3.8mg/dL,PTが94.3%と99.0%と既感染者で低い傾向を認めた(p=0.009,p=0.081).HBs抗原陽性者および既感染パターンで免疫抑制剤またはステロイド製剤を使用している例は77例(70.6%)で,再活性化例はHBs抗原陽性であった1例に認め(1.3%),エンテカビル投与にて鎮静化した.既感染パターンからの再活性化は認めなかった.[結語]IBDにおけるB型肝炎再活性化の頻度は高くないが,既感染パターンの場合,肝予備能が低下している可能性も示唆され,慎重な経過観察が必要と思われた.
索引用語