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症例その他(胃)

タイトル P-002:

難治性潰瘍性大腸炎で大腸全摘後に潰瘍性大腸炎関連びまん性十二指腸炎と上腸間膜動脈症候群を発症した1例

演者 齊藤 景子(千葉大学消化器内科)
共同演者 勝野 達郎(千葉大学消化器内科), 中川 倫夫(千葉大学消化器内科), 丸岡 大介(千葉大学消化器内科), 松村 倫明(千葉大学消化器内科), 新井 誠人(千葉大学消化器内科), 当間 雄之(千葉大学食道胃腸外科), 宮内 英聡(千葉大学食道胃腸外科), 松原 久裕(千葉大学食道胃腸外科), 横須賀 收(千葉大学消化器内科)
抄録 症例は23歳男性.19歳発症の全大腸炎型潰瘍性大腸炎で,ステロイドやタクロリム,インフリキシマブなどで内科的治療を行ったが難治性であり,23歳時に大腸全摘,回腸嚢肛門吻合術,回腸人工肛門造設術を行った.術後早期に回腸嚢炎を発症したため,人工肛門閉鎖術を延期して,抗生剤治療と注腸療法を行った.回腸嚢炎の臨床症状は改善傾向であったが,術後6か月に頻回の嘔吐と食欲不振,体重減少で再入院となった.低緊張性十二指腸造影と造影CTにて,上腸間膜動脈症候群と診断した.絶食と中心静脈栄養を行い症状は軽減していたが,入院17日目に強い腹痛と発熱,血性下痢が出現した.造影CTにて十二指腸と上部空腸の壁肥厚と周囲の脂肪織濃度上昇を認め,経口的小腸内視鏡にて重症のびまん性十二指腸炎を認めた.内視鏡所見,病理所見が潰瘍性大腸炎の大腸病変と類似しており,潰瘍性大腸炎関連びまん性十二指腸炎と診断した.プレドニン40mg/日静注療法を開始したが5日経過しても効果なかったため,タクロリムス持続静注療法(血中濃度15-20 ng/mL)を行ったところ,臨床症状,採血結果,内視鏡所見,病理所見いずれも著明に改善した.回腸嚢炎は十二指腸炎に対する治療により軽快,中心静脈栄養により体重増加したことで上腸間膜動脈症候群も軽快して経口摂取可能となったため,粉砕した5-ASA内服を開始し,タクロリムスを経口内服に変更して入院77日目に退院となった.退院後,粉砕した5-ASA内服のみで十二指腸炎,回腸嚢炎ともに寛解が維持されている.大腸全摘後に潰瘍性大腸炎関連びまん性十二指腸炎と上腸間膜動脈症候群を発症し,タクロリムス静注療法が著効した貴重な症例であり,文献的考察を加えて報告する.
索引用語