セッション情報 |
ポスター
症例その他(胃)
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タイトル |
P-004:PPIによる高ガストリン血症が誘因と思われる多発粘膜内癌を認めたヘリコバクターピロリ感染胃炎の一例
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演者 |
安食 元(豊郷病院消化器内科) |
共同演者 |
吉川 邦生(豊郷病院消化器内科), 向所 賢一(滋賀医科大学病理学講座) |
抄録 |
症例は57歳男性.高血圧,糖尿病からの慢性腎不全で血液維持透析を週3回施行中.内シャント閉塞予防目的でチクロピジンを内服,同時にプロトンポンプ阻害剤(PPI)も投与されていた.経過中に貧血が見られ,上部消化管評価のために上部消化管内視鏡を行ったところ,萎縮性胃炎(O-3)を背景に多発する易出血性の過形成性ポリープが認められ,貧血の原因と考えられた.多発胃過形成性ポリープ16個を内視鏡切除したところ,3個のポリープに粘膜内癌が確認された.背景胃粘膜には嚢胞状に拡張した胃底腺,壁細胞の内腔への鋸歯状変化,一部にECL micronestsが確認され,高ガストリン血症の存在が疑われた.血中ガストリンを測定したところ10206 pg/ml(基準値:37~172)と高値であった.PPI内服を中止したところガストリン値は2か月で566 pg/mlまで低下した.迅速ウレアーゼ試験と鏡検法でヘリコバクターピロリ感染が確認された.抗胃壁細胞質抗体陰性,抗内因子抗体陰性,コンゴレッド染色で前庭部以外は胃酸分泌が確認されたためにA型胃炎は否定的と考えた.全身精査では膵臓含めガストリン産生腫瘍を疑う腫瘤は確認されず,副甲状腺機能,Ca濃度も正常であった.萎縮性胃炎,PPI投与による低胃酸状態からガストリン値が上昇,腎不全がさらにガストリン濃度上昇に寄与したものと思われた.著明な高ガストリン血症が胃粘膜の過形成と粘膜内癌発生をきたした可能性が疑われた.粘膜内癌はいずれも治癒切除であったため,PPIを粘膜保護剤に変更し,ヘリコバクターピロリ除菌療法を行い慎重に経過観察を行っている.日常診療で頻用されているPPIが胃癌発生の誘因となった可能性が疑われる症例を経験したため報告する. |
索引用語 |
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