セッション情報 ポスター

症例その他(胃・十二指腸1)

タイトル P-009:

シンガポール渡航後に発症し,便からの虫体検出により確定診断に至ったジアルジア症の一例

演者 榎本 瑠奈(東京共済病院消化器科)
共同演者 菅原 和彦(東京共済病院消化器科), 冲永 康一(東京共済病院消化器科), 江南 ちあき(東京共済病院消化器科), 渡部 衛(東京共済病院消化器科), 三島 果子(東京共済病院消化器科), 小野塚 泉(東京共済病院消化器科), 渡辺 守(東京医科歯科大学消化器内科)
抄録 症例:日本在住の33歳アメリカ人男性.シンガポールから帰国した2日後より鮮血が混入した水様便を1日10回以上認め,38度台の発熱もあり,症状出現3日目に当院を受診した.体温37.8度,WBC 14400/μl,CRP 3.81 mg/dlであり水様便を認めた.感染性腸炎と考えcefmetazoleの点滴投与を開始したが,便からGiardia lambliaのシストおよび栄養型が検出された.ジアルジア症と診断しmetronidazole 750 mg/dayの投与を開始した.Metronidazole投与4日目以降下痢は改善し,7日間で投与を終了した.発症前,日本人の妻以外との性的接触はなく,シンガポールでの生水摂取もなく,感染経路は特定出来なかった.腹部CTでは十二指腸下行脚および上行結腸の壁肥厚を認めた.既報では上部消化管内視鏡検査での所見として,十二指腸にびらんを伴わない黄白色調小隆起の集簇や,辺縁隆起を伴う発赤した小陥凹などが報告されており,同部位からの生検で虫体の検出を散見する.本例でも十二指腸下行脚に白色調の軽度隆起性病変や白色顆粒状小隆起の集簇を伴う隆起を認めたが,生検では虫体付着を認めなかった.ジアルジア症はGiardia lambliaによる人畜共通の原虫感染症であり,熱帯,亜熱帯地域を中心に世界中に分布している.汚染水や食品の経口摂取により感染し,発展途上国では発症率が20-30%にものぼるが,本邦では0.5%前後,届出数は年間約100件に留まり,その殆どは輸入感染症である.原虫感染症のため通常の便培養検査では検出されず,見逃されている症例も多数存在すると推測される.本例ではシンガポールへの渡航歴から原虫感染を疑い,便培養だけでなく塗沫鏡検も行い確定診断に至った.海外渡航後の下痢症に対しては原虫感染を考慮して塗沫鏡検を積極的に施行すべきである.
索引用語