セッション情報 ワークショップ17(消化器病学会・肝臓学会合同)

遺伝性肝胆膵疾患の病態と治療

タイトル 消W17-8:

遺伝子性膵疾患の病態と治療法

演者 洪 繁(慶應義塾大・システム医学)
共同演者 松浦 俊博(国立長寿医療研究センター・消化機能診療部), 石黒 洋(名古屋大大学院・健康栄養医学)
抄録 【目的】膵は栄養の消化において最も重要な臓器である。殆どの膵疾患では進行すると機能不全を合併するため、患者の予後を改善するためには消化吸収と栄養状態に注意して治療を行う必要がある。遺伝性膵疾患は稀な疾患であることで確立した治療法は存在しない。今回我々は、稀な遺伝性膵疾患である膵嚢胞線維症(CF)、遺伝性膵炎(HP)、全膵脂肪置換症を経験したのでその診断及び治療経過について報告する。【患者及び経過】症例1:CF、38才男性。小児期より肺炎を繰り返し、20歳頃に診断された。二人の妹のうちの一人は患者で30歳頃死亡。本人は20才頃から呼吸器科に通院している。BMI 17と高度の痩せ。遺伝子解析ではT1086I及びdel16-17bのヘテロ。腹部CTでは膵に多発する小嚢胞を認めた。38才時に呼吸器感染症の悪化で死亡した。症例2:HP、32才女性、小児期より急性膵炎発作を繰り返し過去に三回の膵臓手術歴(最終手術2006年)がある。遺伝子変異はカチオニックトリプシノーゲンN29I変異のヘテロ。最終手術後も一ヶ月に一度程度、高度の腹痛を認め、治療のため頻回の入院治療を要した。在宅での栄養管理及び入院回数の減少を目的に2010年に在宅IVHを導入したところ、以後20ヶ月以上にわたり在宅療養を継続できている。症例3:全膵脂肪置換症、60才台男性、二人兄弟の弟。兄も全膵脂肪置換症と診断されている。42歳時に健康診断で膵に異常を指摘された。1993年S試験で液量77ml/h、MBC 50.3mEq/L、アミラーゼ量5100U/hと高度の外分泌機能低下を認めたが、栄養状態も良好で特に症状を認めていなかった。便エラスターゼ1は兄弟とも正常下限の10%程度と高度に低下。遺伝性を疑い検索したSBDS遺伝子の(Ex1-5)のエクソン部のシークエンスでは異常を認めなかった。現在も特に症状もなく、栄養状態も良好で外来通院中である。【結論】遺伝性膵疾患は原因により病態が異なるために、症例毎に栄養状態の改善を目標にテーラーメード治療を行う必要がある。
索引用語 膵嚢胞線維症, 遺伝性膵炎