セッション情報 ポスター

小腸 症例(IBD)

タイトル P-036:

3剤併用療法にて胃潰瘍が出現した慢性C型肝炎合併クローン病の1例

演者 菊池 英純(青森県立中央病院消化器内科)
共同演者 高橋 一徳(青森県立中央病院消化器内科), 伊藤 智子(青森県立中央病院消化器内科), 島谷 孝司(青森県立中央病院消化器内科), 金澤 浩介(青森県立中央病院消化器内科), 棟方 正樹(青森県立中央病院消化器内科), 沼尾 宏(青森県立中央病院消化器内科), 福田 眞作(弘前大学消化器血液内科)
抄録 【はじめに】炎症性腸疾患において病悩期間が長い患者では,輸血の既往を有しC型肝炎合併の患者も存在する.近年,C型肝炎に対しテラプレビルを含む3剤併用療法が開始され,従来のインターフェロン+リバビリン療法に比べより高い治療効果を期待できるようになった.今回,我々は慢性C型肝炎を合併する抗TNFα製剤使用中の寛解期クローン病患者に対し,3剤併用療法を施行した.【症例】59歳,男性.昭和49年(19歳)発症のクローン病小腸大腸型で,これまでに平成元年大腸亜全摘術,平成18年に小腸部分切除術の既往があり,その他にも大量の小腸出血・輸血を繰り返し血管塞栓術も施行されてきた.平成23年よりadalimumabを開始してからは症状が安定し寛解を維持していた.平成24年4月に本人よりC型慢性肝炎に対する治療希望の申し出があり,抗ウイルス療法を検討.インターフェロン投与期間の短い3剤併用療法を開始することとなり入院した.同年4月11日より3剤併用療法を開始,血球減少は軽度であり皮疹・発熱などの有害事象は認めず外来治療に移行した.しかし治療開始3週後より腹痛が出現,ストマから暗赤色の排便を認め5月1日に再入院となった.入院後の精査にて胃潰瘍の出現を認めたが,3剤併用療法を中止することで自然軽快した.HCVウイルス量は低下したものの消失には至らなかった.現在までadalimumabは投与継続しており,クローン病の寛解は維持されている.【考察】クローン病患者におけるHCVに対する抗ウイルス療法の報告は散見されるが,テラプレビルを含む3剤併用療法の報告例は少ない.抗TNFα製剤とインターフェロンを同時期に投与した貴重な症例である.本症例の経過により3剤併用療法はクローン病の病勢を悪化させる可能性が示唆された.炎症性腸疾患患者に対する抗HCV療法には注意を要する.
索引用語