セッション情報 ポスター

小腸 症例(IBD)

タイトル P-038:

大腸内視鏡検査にて診断した,S状結腸回腸瘻形成回腸悪性リンパ腫の1例

演者 宇田川 勝(JAとりで総合医療センター外科)
共同演者 大野 智里(JAとりで総合医療センター内科), 下代 玲奈(JAとりで総合医療センター外科), アディクリスナ ラマ(JAとりで総合医療センター外科), 岡本 浩之(JAとりで総合医療センター外科), 稲留 征典(JAとりで総合医療センター病理)
抄録 【緒言】われわれは,回腸S状結腸瘻を形成した回腸原発悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.【症例】慢性腎不全にて当院腎臓内科通院中の64歳の女性で,進行する貧血と,数年前より時折出現していた下腹部違和感の精査目的にて大腸内視鏡検査施行となった.その結果肛門縁より約25cmのS状結腸に辺縁不整で大小不同の隆起性病変と,その間に不整形潰瘍が混在した,多彩な腫瘍性病変を約5cmの区域に渡って認めた.同部のScopeの通過は可能であり,口側大腸の他に,小腸の片側のみに挿入可能であった.本症例は3年前にも同様の下腹部違和感を主訴に当院内科にて注腸検査を施行されていたが,その際には全く異常を認めておらず経過観察となっていたことから,原発臓器は回腸であると断定した.また,生検にてDLBCLと診断され,Gaシンチグラフィーにて病変部に一致したGaの集積を認め,CTなどと併せた評価で他の表在あるいは縦隔リンパ節腫大などを認めなかったため,S状結腸瘻を形成した回腸悪性リンパ腫の診断にて回腸部分切除術,S状結腸合併切除術を施行した.その後,補助化学療法としてR-CHOP療法を行っているが,術後3ヵ月を経過した現段階において転移・再発は認めていない.【考察・結語】小腸悪性リンパ腫は早期発見が比較的困難であり,腸重積,腸閉塞,あるいは腸管穿孔等の急性腹症を呈して緊急手術に至り,そこで初めて確定診断されることが少なくない.また,膀胱や直腸といった,比較的固定された臓器との瘻孔の報告は散見されるものの,本来可動性が良いと思われる臓器同士,すなわち回腸とS状結腸が瘻孔を形成することはかなり稀であると考えられる.さらに,本症例の如く併存疾患に慢性腎不全を有するケースでは術後化学療法に関しては有害事象で難渋することも少なくない.これらの点を中心に,若干の文献的考察を加えて最新の知見を報告する.
索引用語