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食道 その他

タイトル P-050:

RNA結合蛋白質による転写後調節機構の異常と消化器がん発症機構の解明

演者 増田 清士(徳島大学人類遺伝学分野)
共同演者 庄田 勝俊(徳島大学人類遺伝学分野), 西田 憲生(徳島大学ストレス制御医学分野), 六反 一仁(徳島大学ストレス制御医学分野), 井本 逸勢(徳島大学人類遺伝学分野)
抄録 【目的】ヒトゲノム配列が解読され,ポストゲノム研究が進むに従って,さらに複雑な遺伝子制御機構が明らかにされつつある.特に,RNAの多彩な機能が注目されており,スプライシング,核外輸送,RNAの安定化,翻訳などの多段階で遺伝子発現を調節する転写後調節機構の重要性が認識されている.RNA結合蛋白質は転写後調節を行う主要な因子で,標的mRNAと配列特異的に結合し,細胞増殖,アポトーシス,ストレス応答などを広範囲に制御している.またがん組織で高発現しており,発がんや遠隔転移・薬剤耐性の誘導に関与していることが示唆されている.今回我々は,食道扁平上皮がんにおいてがん組織特異的に発現する新規RNA結合蛋白質(Squamous cell carcinoma Specific Protein 1;SSP-1)を見いだした.【方法・成績】食道がん手術症例(T1:10例,T3:10例)を対象とし,SSP-1および細胞増殖マーカーであるKi67の発現を免疫組織化学染色で評価した.SSP-1は,正常扁平上皮組織では基底部の増殖帯細胞の核で発現しているのに対し,進行食道扁平上皮がん組織では核および細胞質に強い発現を認め,SSP-1の発現上昇に伴ってKi67陽性細胞数が有意に増加していた.さらに高分化型扁平上皮がんに比べ,低分化型扁平上皮がんでSSP-1の発現が増加する傾向が見られた.またSSP-1は早期食道がん組織に比べて進行食道がん組織で発現が増強する傾向が見られたことから,がんの進展に関与することが示唆された.免疫沈降を用いた検討から,SSP-1はアポトーシス誘導遺伝子や細胞周期制御遺伝子のmRNAと結合し,その発現を翻訳レベルで抑制していた.また食道がん細胞でSSP-1をノックダウンすると,コントロール細胞に比べ増殖が有意に抑制された.【結論】以上のことからSSP-1はがん進展を促進することが示唆され,新規治療標的となる可能性があると考えられた.またSSP-1は新規診断マーカーとして有用であると考えられ,現在さらに解析を進めている.
索引用語