セッション情報 ポスター

腸炎2

タイトル P-076:

CPS(calcium polystyrene sulfonate)起因性消化管障害の検討

演者 渡海 義隆(がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科)
共同演者 小泉 浩一(がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科), 堀口 慎一郎(がん・感染症センター都立駒込病院病理科)
抄録 【背景】CPSは高カリウム血症の治療に用いられる陽イオン交換樹脂の一つであるが,まれに潰瘍形成や腸管穿孔等の腸管障害をきたすことが報告されている.【目的】CPS内服中に発症した消化管障害の病態,背景因子,発症頻度等を明らかにする.【方法】CPSを処方された症例の臨床的特徴を解析し,消化管穿孔をきたした3例の臨床病理学的検討を行う.【結果】当院で2004年~2013年の間にCPSを内服していた症例は424例で,うち3例(0.7%)で腸炎もしくは腸管穿孔を認めた.症例1:71歳男性.アルコール性横紋筋融解症を背景に約2年半CPS内服中,腹痛・血便・下痢が出現.大腸内視鏡検査で横行結腸に全周性の潰瘍を認め,生検組織診で結晶を認めた.3週間後には上行結腸に病巣は進展.横行結腸狭窄部に対して拡張術施行後,同部位で穿孔を来した.症例2:85歳女性.腎不全に対して3年CPS内服中に下腹部痛が出現,横行結腸穿孔の診断で緊急手術を施行した.症例3:62歳男性.喉頭癌に対する化学療法中にCPS内服開始し,7日後に下腹部痛が出現.S状結腸穿孔をきたした.CPS内服中止後も下行結腸,小腸に計4回穿孔をきたした.穿孔までの内服期間は7日~3年で,穿孔部位はS状結腸~小腸と各区域にわたった.背景因子として,高血圧,喫煙,脱水,腎不全,腹壁瘢痕ヘルニアによる絞扼,5-FUによる消化管障害およびオキシコドン内服による硬便があげられ,これらがリスク因子である可能性が示唆された.また,腎不全透析中や手術直後の症例でCPS内服開始後に腹痛が出現し,中止により症状が軽快した症例も認めた.【結論】腎不全や末梢循環不全などの腸管虚血のリスク因子を有する患者では,CPSにより腸炎や穿孔を来す可能性があり,CPS中止後も再度穿孔をきたしうることを理解しておく必要がある.
索引用語