セッション情報 ポスター

HCC-2

タイトル P-105:

神経内分泌癌を伴った肝細胞癌の一例

演者 小野 雄司(市立札幌病院消化器内科)
共同演者 重沢 拓(市立札幌病院消化器内科), 小池 祐太(市立札幌病院消化器内科), 藤田 與茂(市立札幌病院消化器内科), 遠藤 文菜(市立札幌病院消化器内科), 中村 路夫(市立札幌病院消化器内科), 工藤 俊彦(市立札幌病院消化器内科), 永坂 敦(市立札幌病院消化器内科), 西川 秀司(市立札幌病院消化器内科), 三澤 一仁(市立札幌病院外科), 佐野 秀一(市立札幌病院外科)
抄録  症例は60歳代の男性で,心窩部痛を主訴に近医を受診した.肝左葉に腫瘍性病変を指摘され,当院を紹介された.当院受診時のCT検査では肝S4に62mm大の病変を認め,肝実質と比し造影早期相にて高吸収,平衡相にて低吸収の所見であった.遠隔転移・リンパ節転移を疑う所見は認めなかった.また腹部超音波検査では同病変はモザイク状の所見を呈し,以上より肝細胞癌(HCC)と診断した.血液検査ではHBs抗原・抗体,HCV抗体とも陰性,飲酒量は機会飲酒で脂肪肝の所見もなく,IgG・IgMは基準値内,ANAおよびAMA-M2は陰性であった.手術適応と考え,初診時より約1ヵ月半後に肝左葉切除術が行われた.手術直前のCT検査ではS4の病変は72mm大に増大し,あらたにS3に8mm大の低吸収領域および肝門部リンパ節の腫脹を認めた.
 病理組織診断では,S4の病変は68×60mm大の白色結節で,その大部分は高分化から低分化まで様々な分化度のHCCであったが,一部に紡錘形核を持つN/C比の高い腫瘍細胞が胞巣状や索状構造,ロゼット様の構造を示し増殖する像を認め,免疫染色でCD56,synaptophysin,chromograninAに陽性を示し,神経内分泌癌(NEC)と考えられた.MIB-1 indexはHCC領域で30%,NEC領域で80%と高値であった.またS3の結節は8mm大で,S4の病変のNEC領域と同様の所見であり,#13リンパ節に転移を認め組織像はNECであった.
 肝原発の神経内分泌癌は稀で,外科的切除以外に有効な治療法がなく予後不良とされる.その中でもHCCとNECの混在は稀であり,過去の報告ではHCCからNECへの移行が示唆されたものもある.本症例でも組織像,臨床経過からみるとHCCの一部がNECに分化し,急速な増大および転移をきたしたものと推察した.本症例は肝原発神経内分泌癌の発生について示唆に富む一例と考えられた.
索引用語