セッション情報 ポスター

HCC-2

タイトル P-107:

ソラフェニブ投与により消化管毛細血管拡張症を発症したと考えられた進行肝細胞癌の3例

演者 廣畑 成也(兵庫県立加古川医療センター消化器内科)
共同演者 白川 裕(兵庫県立加古川医療センター消化器内科), 尹 聖哲(兵庫県立加古川医療センター消化器内科), 松浦 敬憲(兵庫県立加古川医療センター消化器内科), 八幡 晋輔(兵庫県立加古川医療センター消化器内科), 﨏本 善雄(兵庫県立加古川医療センター消化器内科), 大内 佐智子(兵庫県立加古川医療センター消化器内科), 堀田 和亜(兵庫県立加古川医療センター消化器内科)
抄録 ソラフェニブ(SF)はマルチキナーゼ阻害剤で,様々な有害事象を合併する.今回我々はSF投与により消化管毛細血管拡張症よりの出血を合併した進行肝細胞癌の3例を経験したので報告する.【症例1】74歳男性.C型肝炎.10年前より肝癌に対し肝切除,RFA,TACEを繰り返していたがTACE不能となりさらに両副腎転移も出現したためSF800mgで開始.51日目にタール便出現しHb7.8g/dlまで低下.上部消化管内視鏡(EGD)で幽門前庭部中心に毛細血管拡張症からの持続出血を認めたためAPCで止血し,以後SF中止.【症例2】62歳男性.C型肝炎.4年前より肝癌対しTACEを繰り返していたがTACE不応,肺・腹腔内リンパ節転移でSF800mg開始.17日目に黒色便出現しHb8.6 g/dlまで低下.EGDで口腔粘膜の毛細血管拡張像を認めた.上部消化管には明らかな出血源は認めなかったがSF中止.中止後12日目に再び黒色便出現.EGDで前庭部中心に毛細血管拡張症からの持続出血を認めたためAPCで止血.【症例3】70歳男性.B型肝炎.17年前より肝癌に対しTACE,RFAを繰り返していたが肺転移にてSF800mg開始.202日目に血便出現,216日目にHb5.5 g/dlまで低下.EGDで前庭部に毛細血管拡張症からの持続出血を認めたためAPCで止血.下部消化管内視鏡で回腸末端にも毛細血管拡張を認めた.SFは一時休薬後800mgで再開継続中.【考察】肝癌に対するSFの市販後特定使用成績調査では,食道静脈瘤を除いた消化管出血は4.0%で,うち3.8%は重篤であったと報告されている.SFによる消化管毛細血管拡張の機序は不明だが,肝癌でのSF使用例は門脈圧亢進症を伴っている場合が多く,それに伴う消化管粘膜の出血をSFが助長している可能性が考えられる.今後TACEとの併用や術後補助療法など肝癌に対するSF投与の機会は増加すると予想され,消化管出血の原因として毛細血管拡張症にも注意が必要である.
索引用語