セッション情報 ポスター

肝膿瘍

タイトル P-112:

Salmonella choleraesuisによる難治性多発肝膿瘍の一例

演者 鎌谷 高志(北里大学メディカルセンター)
共同演者 横森 弘昭(北里大学メディカルセンター)
抄録 化膿性肝膿瘍の起因菌は,Klebsiella pneumoniaeとEscherichia coliの頻度が高く,治療が遅れると敗血症,多臓器不全を併発して致死的となりうる疾患である.今回Salmonella choleraesuisによる難治性多発肝膿瘍の一例を経験したので報告する.症例は62歳男性.2013年7月5日より全身倦怠感を自覚した.アルコール歴は150g/day,40年間であった.7月6日に40℃の発熱を認め当院を受診し,CT検査にて肝内に多発性の低吸収域を認めたため肝腫瘤の精査加療目的に入院した.入院前に下痢はなく旅行歴もなかった.入院時現症:身長169cm,体重65.5kg,意識清明,脈拍100/分・整,血圧110/46 mmHg,体温39.6℃,腹部は平坦・軟で肝を2横指触れ圧痛を認めた.脾は触知しなかった.白血球14200/μL,総ビリルビン1.6 mg/dL,AST 65 IU/l,ALT 77 IU/l,ALP 597 IU/l,γ-GTP 367 IU/l,CRP 25.16 mg/dlであり,HBV,HCV,HIVは陰性であった.CTでは肝S2・5・6・8に径0.5cmから4cmの低吸収腫瘤が多発しており,腫瘤辺縁に造影効果を認め肝膿瘍と診断した.抗生剤CPZ/SBTで解熱せず,MEPM,CLDMを投与し,複数本の8 Frドレナージtubeにて経皮的経肝膿瘍ドレナージを施行したが炎症所見は改善を認めず膿瘍径は著明に増大した.血液・膿瘍培養からSalmonella choleraesuisを検出した.7月19日両側肝に動注カテーテルを挿入し,肝動注療法を施行したところ炎症反応は改善し,腫瘍径も増大が止まった.しかしその後排液が止まり,腫瘍径も再度増大した.ドレナージtubeが閉塞したと判断し,12から14Frのドレナージtubeに交換したところ,症状,炎症反応は改善した.その後膿瘍からSalmonellaは消失したがEnterococcus faeciumを検出したため,LZDによる治療を行った.結論:Salmonella choleraesuisによる多発肝膿瘍という貴重な1例を経験した.またアルコール常用者が発熱を持続した場合は深部臓器の膿瘍などの感染巣の検索が必要であることが再認識された.
索引用語