セッション情報 ポスター

肝膿瘍

タイトル P-113:

鑑別に苦慮した腹壁膿瘍の1手術症例

演者 西田 悠(医療法人川崎病院消化器内科)
共同演者 田中 さゆり(医療法人川崎病院消化器内科), 青木 領太(医療法人川崎病院消化器内科), 深水 英昭(医療法人川崎病院消化器内科), 竹内 庸浩(医療法人川崎病院消化器内科), 野村 祐介(医療法人川崎病院消化器内科), 多田 秀敏(医療法人川崎病院消化器内科), 前田 哲男(医療法人川崎病院消化器内科)
抄録 【症例】59歳女性【既往歴】糖尿病,冠動脈硬化症,不安神経症【現病歴】平成25年4月頃より右季肋部痛出現し増悪を認めたため同年6月上旬に当院紹介受診.右季肋部に手拳大の腫瘤を触知し腹部CTを施行すると肝S4に径101mm×90mm×97mmの腫瘤を認め腹壁への浸潤が疑われた.初診時のCTでS状結腸の肥厚も指摘あり,また造影CTを施行すると腫瘤内は多房性および隔壁を有し低吸収域を多量に含むため,転移性肝癌および粘液産生胆管癌,嚢胞性腺管癌を疑った.また,初診時よりWBC:10100/μL,CRP:9.3mg/dLと著明な炎症所見も認め肝膿瘍も否定出来なかった.上下部消化管内視鏡検査および全身CTなどその他の悪性病変を精査するも認めず転移性肝癌は鑑別除外とした.入院時より抗生剤投与するが炎症所見の改善も得られず,季肋部痛も改善しないため外科的治療の適応と判断し,同月中旬に外科転科の上,手術を施行した.術中所見としては,腫瘤は腹壁由来であり腫瘤壁には腫瘍様の組織は存在せず,膿汁のみを認め腹膜膿瘍の診断であった.肝右葉前面への癒着は認めるが肝内への浸潤は認めず,胸腹壁・横行結腸間膜・胃十二指腸前面に癒着していたため膿瘍の掻爬のみとした.また,術中所見では膿瘍以外に穿孔病変など明らかな基礎疾患は認めなかった.術後,速やかに炎症所見は改善し退院となる.【考察】本症例では,肝に腫瘤性病変を認めるが腫瘤が大きく肝由来か腹壁由来かの鑑別が非常に困難であった.また,腹壁膿瘍は虫垂炎や消化管穿孔など腹腔内感染や術後創部感染に続発することが多いと言われるが,本症例では明らかな基礎疾患を認めず希な症例であると言える.
索引用語