セッション情報 ワークショップ17(消化器病学会・肝臓学会合同)

遺伝性肝胆膵疾患の病態と治療

タイトル 消W17-9:

わが国の嚢胞性線維症患者のCFTR遺伝子変異の特徴

演者 中莖 みゆき(名古屋大大学院・健康栄養医学)
共同演者 石黒 洋(名古屋大大学院・健康栄養医学), 成瀬 達(みよし市民病院・内科・消化器科)
抄録 【目的】嚢胞性線維症(cystic fibrosis:CF)は、cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)遺伝子の変異を原因とする常染色体劣性遺伝性疾患である。わが国では年間受療患者数約15名の稀な疾患で、平均生存期間は20年未満である。汗中Cl-濃度の測定によるCFTR機能の評価とCFTR遺伝子解析により早期に診断し、適切な治療を始めることが重要である。CFTR遺伝子は人種によって変異のスペクトルが異なるため、わが国のCF患者に特有の遺伝子変異を明らかにする必要がある。【方法】2007年02月以降、CFが疑われた日本人6名、日系ペルー人1名、アゼルバイジャン人1名のCFTR遺伝子を解析した。年齢は10ヶ月~38歳、男女比は4:4、汗中Cl-濃度は1症例が境界域(59.1 mM)、7症例が60 mM以上の異常高値であった。膵外分泌不全は6例、胎便性イレウスは3例、繰り返す気道感染などの呼吸器症状は8例に見られた。ゲノム解析として全27エクソンとその上下流及びプロモーター部(約1,000 bp)の直接シーケンスとMultiplex ligation-dependent probe amplification(MLPA)解析を、また鼻粘膜拭い液から抽出したCFTR mRNAを解析した。【成績】16アレル中13アレルにCF原因変異が検出された。日本人患者からdele 16-17b(5)、R75X(1)、E217G(1)、L441P(1)、T1086I(1)、日系ペルー人患者から1609delCA(1)、G542X(1)、アゼルバイジャン人患者から182delT(1)、Δ508F(1)が検出された(括弧内はアレル数)。片側アレルにのみdele 16-17b変異がある3症例では、直接シーケンスでは欠損が検出されず、MLPA、鼻粘膜CFTR mRNAの解析、あるいは欠損領域をはさんだdele 16-17b検出用PCRが必要であった。【結論】日本人CF患者の12アレル中9アレルにCFTR遺伝子変異が検出され、そのうちdele 16-17b、L441P、T1086Iはアジア人種に特有な変異である。dele 16-17bは日本人で最も頻度の高いCF原因遺伝子変異であり、変異スクリーニングにdele 16-17b検出用PCRを加える必要がある。
索引用語 嚢胞性線維症, CFTR