セッション情報 ポスター

膵 その他

タイトル P-129:

膵炎を契機に発見された腸間膜内異所性膵の一例

演者 神渡 翔子(京都民医連中央病院内科)
共同演者 岡本 亮(京都民医連中央病院外科), 水島 麻依子(京都民医連中央病院内科), 木下 公史(京都民医連中央病院内科), 田中 憲明(京都民医連中央病院内科), 西田 修(京都民医連中央病院内科)
抄録 【症例】63歳女性【主訴】腹痛【現病歴】来院前日夜から腹痛が出現し,翌朝になっても改善を認めない為,当院を受診された.【既往歴】糖尿病,脂質異常症,先天性単冠動脈【内服薬】ロバスタチンカルシウム錠2.5mg【生活歴】喫煙歴なし,機会飲酒【入院時現症】腹部:平坦,軟,心窩部から左季肋部・左側腹部にかけて圧痛を認めた【入院後経過】腹痛とアミラーゼ864U/lと上昇し,膵の足側から上腸間膜動脈周囲にかけて脂肪織濃度の上昇を認め,膵実質の炎症は比較的軽微だったが,臨床的には膵炎と考え,絶食,補液にて保存的に加療を行った.一方で白血球とCRPの炎症反応上昇も著明であったため,抗生剤投与も行ったところ,症状の改善は認めた.近位空腸の腸間膜内に周囲脂肪織濃度の上昇を伴う,造影効果のある10cm×3cm程度の軟部組織様構造を認め,腹痛部位と一致することから今回の症状の主座と考えられた.炎症所見改善後に撮像したMRIでは同部位に正常膵と同様のintensityで内部に管腔を伴う構造を認め,本経過は異所性膵による膵炎と考えられた.第64病日,腹腔鏡下に観察を行ったところ,Treitz靱帯から10cm部位の空腸に密に接した全長約10cmの異所性膵を認め,同部位の全摘出と腸管切離を施行した.摘出標本では空腸内への膵管の開孔を認め,組織学的検討においては,腺房,導管,ラ氏島を含む膵組織を認め,また膵炎による変化も認められた.【考察】異所性膵とは腸管の回転によって膵が胃などにちぎれて迷入したものではなく,最近の知見では,異所性に発生した膵の前駆細胞が胃十二指腸などの本来の臓器へと分化せず,そのまま膵が形成されたものと考えられている.本症例でも空腸腸管膜に異所性に発生した膵組織が抑制されず膵が形成され,今回膵炎を発症したことで発見に至ったものと考えられた.本症例は膵組織の一部分ではなく導管の開孔まで認める膵臓そのものと言える組織が腸間膜内に存在した,稀な症例と考えられたため報告する.
索引用語