セッション情報 ポスター

臨床病態-1

タイトル P-142:

炎症性腸疾患に対するInfliximab治療の検討―主として安全性の観点から

演者 大森 信弥(仙台赤十字病院消化器内科)
共同演者 山下 和良(仙台赤十字病院総合内科), 佐藤 俊裕(仙台赤十字病院消化器内科), 菅野 厚(仙台赤十字病院消化器内科)
抄録 【背景】Infliximab(IFX)により,主に難治性の炎症性腸疾患(広義のIBD,主に潰瘍性大腸炎―以下UC,クローン病―以下CD,など)の患者の予後が,劇的に改善した.一方で,血球数の低下や同薬の諸々の副作用により,治療継続に難渋する症例も存在する.【目的】当院におけるIBD患者に対するIFX治療の現状を評価し,その安全性・妥当性について検討すること.【方法】対象は2008年1月から2013年6月までの期間にIBD患者に対しIFX治療を試みた208件.症例の内訳は,UC 11例,CD3例,ベーチェット病1例であった.各IFX施行予定件における臨床像を,主に安全性に関する点(治療前の自覚症状,検査成績,施行可否の決定経緯,施行後の副作用など)を中心に検討した.【結果】平均年齢は33.58 +/- 10.74歳,対象の全UC例がステロイド抵抗性ないし依存性の症例であり,全CD例が,栄養療法での緩解導入不能ないしは再燃例であった.IFX施行前(当日)の診察において,胸部単純XPにおいての異常所見を呈した件が1件,感冒症状を訴えた件が5件,(IFX投与が望ましいとされていない)血中白血球数4000/μL未満(3450~3990/μL)が10件,リンパ球数1000/μL未満(710~990/μL)が21件であった.これら実件数,計32件のうち,当日のIFX投与を中止(延期)したのが5件,患者側の希望により十分なinformed consentのもと,当日のIFX施行をしたのが27件であった.施行後の副作用として,6件でIFX施行前には認めなかった感冒症状(全件で対症的に対応可能),1件で頭痛,2件で皮膚掻痒が認められたが,重篤なinfusion reactionや感染症の発症を認めなかった.対象全症例での緩解導入率は80%,維持率は約46.7%であった.【総括】当院におけるIBD患者に対するIFX治療は,患者側の要望を勘案しつつ,医療的見地からみた治療適応を十分に吟味した上で,安全に施行し得ていた.さらに症例を蓄積し,より安全かつ有効なIBD診療を模索することが今後の課題と考えられた.
索引用語