抄録 |
《症例》63才女性【家族歴】【既往歴】特記すべきことなし.【現病歴および経過】2013(H25)年2月中旬頃より食思不振を自覚され同3月中旬近医を受診された.GTFにてファイバーは通過し狭窄は伴わないものの胃体中上下部に全周性の4型病変を認めた.生検はadenoca.(tub2,por)と診断された.CTでは胃全周性の壁肥厚を認め多発肝腫瘍を認めた.また腹腔内全体の腸間膜や腹膜に不整な肥厚,腫瘤形成を指摘され,さらに傍大動脈周囲リンパ節腫脹を認めた.そのため高度胃浸潤,多発肝転移,腹膜播腫,傍大動脈周囲リンパ節転移と診断,手術適応はなく全身化学療法の適応と考えられた.CVポートを留置した後同3月下旬よりTS-1 80mg/body 21days+CDDP 89mg/body(day8)を1コースとして開始した.開始後より食思不振の自覚症状が著明に改善した.2コース終了時のfollow CTで胃の全周性壁肥厚は改善し,多発肝転移や傍大動脈周囲リンパ節,腹膜播腫と考えられた腹膜肥厚も著明に縮小しPRと判定した.Follow GTFでも主病巣が著明に縮小した.この際の生検で癌組織が残存していたがHER2 score(3+)であった.2コース終了後に全身倦怠感などの副作用を認め入院治療を要したため,3コースからはCDDPをdose downしTS-1 80mg/body 21days+CDDP 70mg/body(day8)として5コースを終了した.同9月のfollow CTにて腹膜播腫が再び増大したため,同10月からはHerceptine 330mg/body(day1)+Paclitaxel 110mg/body(day1,8)を開始した.やはり開始後より食思不振の自覚症状が著明に改善し現在も継続中である.《まとめ》多発肝転移,腹膜播腫,傍大動脈周囲リンパ節転移を伴うstage4高度進行胃癌に対し集学的治療が著効した稀な症例を経験したので,若干の文献的検索を加えて報告する. |