抄録 |
【背景と目的】頭頸部癌・食道癌は高度進行であってもCRT等の治療により根治も見込める癌であるが,治療合併症として咽頭・食道狭窄を伴うことがある.このような場合,従来は内視鏡による上部消化管スクリーニング検査は困難であったが,近年細径内視鏡が開発され,さらにその画質の向上と画像強調観察により,このような症例に早期胃癌が発見されることもまれではなくなった.今回われわれは咽頭癌治療後に咽頭狭窄を合併した早期胃癌症例に対して経胃瘻的にESDを行ったので報告する.(Gastrointestinal Endoscopy In Press)【対象と結果】症例1:78歳女性.IV期の中下咽頭癌に対する治療前の重複癌精査目的に当科紹介.咽頭部は腫瘍による狭窄が高度であり,通常径内視鏡での咽頭通過は不可能であった.細径内視鏡でのEGDにて,胃角部大弯に陥凹性病変を認め,生検にて高分化型腺癌と診断した.咽頭癌に対して化学放射線療法を施行しCRが得られたため,胃癌に対する内視鏡治療を計画した.咽頭癌治療時に造設した胃瘻部の瘻孔を拡張し,経胃瘻的にESDを行った.症例2:63歳男性.IV期の下咽頭癌に対し化学放射線療法を施行後CRであった.治療後咽頭狭窄を合併し,経口摂取が不十分のため胃瘻より栄養補給を行っていた.細径内視鏡でのEGDにて胃体上部後壁にI+IIa病変を指摘され生検では高分化型腺癌であった.胃瘻を拡張後,経胃瘻的に通常径内視鏡を挿入しESDを施行した.両症例ともESDにて合併症なく一括切除が可能であった.【考察】経胃瘻的内視鏡治療は経口的に内視鏡治療が困難な症例では有効な治療法であると考えられた.操作感は直腸ESDと似ており,2症例とも先端アタッチメントの使用は困難であったが,経口挿入した細径内視鏡補助下にてESDを施行することにより,良好なカウンタートラクションを得ることが可能であった.今後,高齢化に伴う癌罹患率の上昇や癌治療の成績向上により癌のSurvivorに異時性の重複癌が増加することが予想され,重複癌に対する内視鏡診断・治療のストラテジーを確立する必要があると考えられる. |