セッション情報 ポスター

症例胃癌2

タイトル P-153:

HER2陽性StageIV胃癌に対するTrastuzumab併用化学療法の治療経験

演者 青松 直撥(今里胃腸病院外科)
共同演者 土井 洋輔(今里胃腸病院外科), 竹村 哲(今里胃腸病院外科), 由井 三郎(今里胃腸病院外科)
抄録 Trastuzumab(以下T-mab)は抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であり,ToGA試験の結果,本邦でもHER2陽性進行再発胃癌への使用が承認された.胃癌におけるHER2陽性率は約20%であり,胃癌治療ガイドライン2011年速報版によれば,HER2陽性進行胃癌に対する新たな標準治療はT-mabを含む化学療法で,現時点で推奨されるレジメンはcapecitabineまたはfiuorouracil+CDDP+T-mabとされている.一方,通常の切除不能進行胃癌に対する標準療法は,現在のところS-1+CDDP(SPIRITS試験)である.今回我々は,多発転移を伴い著明な幽門狭窄を認めたHER2陽性stageIV胃癌に対しT-mab併用化学療法を施行した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は55歳男性,主訴は食事摂取不良,食後の嘔吐.2013年2月ごろから食事が通りにくくなり,5月に前医を受診.胃癌,肝転移と診断され,加療目的に6月当院紹介,同日入院となった.上部内視鏡検査にて胃内に多量の残渣を認め,幽門前庭部に胃体中部まで全周性に広がる3型腫瘍を認めた.幽門輪は確認できず,ファイバー通過は不可能であった.生検でGroup5,tub2と診断された.精査にて幽門狭窄を伴う進行胃癌,多発肺転移,多発肝転移,腹膜播種,腹直筋転移と診断された.初診時採血ではCEA536 ng/ml,CA19-9 32238U/mlと著明な高値を認めた.経口摂取で嘔吐をきたし,絶食・高カロリー輸液管理とした.S-1内服は困難であり,腹膜播種も疑われることからweekly paclitaxelによる化学療法を開始した.1コース終了後,HER2の過剰発現(3+,IHC法)を認めたため,T-mabの追加をを行った.2コース終了後,腫瘍マーカーはCEA289mg/ml,CA19-9 9753 U/mlまで著明に低下した.上部内視鏡検査では,腫瘍は縮小し幽門輪をファイバー通過可能となった.食事摂取が可能となったため退院し,外来化学療法継続中である.なお化学療法中,大きな有害事象は認めていない.
索引用語