セッション情報 ポスター

膵 良性腫瘍

タイトル P-173:

術前診断可能であった膵lymphoepithelial cystの1例

演者 福原 学(大阪赤十字病院消化器内科)
共同演者 中島 潤(大阪赤十字病院消化器内科), 松田 史博(大阪赤十字病院消化器内科), 岡部 純弘(大阪赤十字病院消化器内科), 大崎 往夫(大阪赤十字病院消化器内科)
抄録 【緒言】今回我々は術前診断可能であった膵lymphoepithlial cyst(LEC)の一例を経験したので報告する.【症例】62歳男性.20歳代よりアルコールを多飲し,頻回に膵炎を発症して,他院に入退院を繰り返してきた.2011年11月に他院で腹部超音波検査を施行され,総胆管の拡張,及び膵頭部の不整形,内部不均一な腫瘤を指摘され,精査目的で当科に紹介された.血液生化学検査では有意な所見を認めなかった.造影CTでは,膵頭部は軽度腫大し,わずかに低吸収を呈する腫瘤を認め,膵体部には膵より頭側に突出する嚢胞性病変を認めた.MRIでは,膵体部病変はT2WIでhigh density areaの内部にlow density areaが混在し,DWIでは拡散の低下がみられた.超音波内視鏡検査では,膵頭部病変の境界は不明瞭,辺縁は不整であり,内部にductal structureを有し,点状,斑状高エコーの散在がみられた.一方,膵体部病変は単胞性の嚢胞内部に充実部を認めた.内視鏡的逆行性膵胆管造影では,下部胆管狭窄及び膵頭部の膵管に口径不整を認め,胆管狭窄部の生検,擦過細胞診を施行したが,悪性所見は認めなかった.また,膵体部の嚢胞性病変と膵管の交通は認めなかった.さらに,EUS-FNAを施行したが,膵頭部病変は炎症性細胞のみであったが,膵体部の病変において無核の扁平上皮細胞が認められた.以上より,膵頭部病変は腫瘤形成性膵炎,膵体部病変は膵のLECを強く疑った.しかし,膵頭部病変が悪性であることを否定しきれず,一旦厳密な経過観察とした.膵体部病変は以後も著変を認めず,EUS-FNAの再検でも悪性所見は得られなかった.しかし,膵体部病変は増大がみられた為,初診より約11ヶ月後に核出術を施行した.摘出標本は35mm大の弾性軟な腫瘤で,内部に白色おから状の物質が充満していた.病理組織像では嚢胞を重層扁平上皮が裏打ちし,更にその外側にリンパ濾胞を伴った多量のリンパ球で構成された組織が覆っていた.【結語】以上,術前診断可能であった膵LECの一例について文献的考察を加えて報告する.
索引用語