セッション情報 ポスター

大腸 腫瘍 症例3

タイトル P-205:

虫垂入口部の腫瘍性病変が先進して発症した不完全型虫垂重積の1手術例

演者 大谷 裕(松江市立病院腫瘍化学療法・一般外科)
共同演者 倉吉 和夫(松江市立病院消化器外科), 梶谷 真司(松江市立病院消化器外科), 河野 道盛(松江市立病院消化器内科), 吉村 偵二(松江市立病院消化器内科), 吉岡 宏(松江市立病院消化器外科), 金山 博友(松江市立病院消化器外科)
抄録 症例は66歳の男性.2013年3月,検診にて便潜血の異常を指摘され,精査目的で当院消化器内科へ紹介された.下部消化管内視鏡検査では,虫垂入口部付近に表面不整な易出血性隆起性病変を認めた.後日施行された腹部CT検査では,虫垂が上行結腸に向かって重積している所見を認めた.これらの結果より,内視鏡的処置(EMRやESD)を施行した場合に消化管が穿孔する可能性が高いと判断され,外科的切除が検討された.病変からの生検で腺癌が検出されたため,回盲部切除術を施行する事となった.手術は腹腔鏡下に施行し,腹腔内の観察で虫垂が不完全に重積している事が分かり,D3リンパ節廓清を伴う回盲部切除術を施行した.切除標本の病理組織学的検索では,虫垂根部の粘膜に存在するvillou tumer内に高分化腺癌が含まれ,深達度はmであり,リンパ節転移を伴っていなかった.また,この病変が上行結腸方向へ先進した事により,虫垂全体が牽引された状態である事が分かった.虫垂内腔には粘液が貯留しており,いわゆるmucoceleの状態であった.虫垂重積は稀な疾患であり,その誘因として子宮内膜症や炎症,粘液嚢胞などの頻度が高いと言われている.我々が検索した限りでは,虫垂癌を先進部とした虫垂重積症の本邦報告は10例であり,その多くが深達度smまでの早期癌であった.この病態では術前診断,悪性腫瘍であった場合の深達度診断が問題であり,さらに内視鏡的処置により消化管穿孔を来す可能性があり,それらを勘案すると,同病態に対する腹腔鏡下回盲部切除術は,手術侵襲や根治性の面で優れた術式であると考えられた.今回我々が経験した診断,治療の概要を報告すると共に,本疾患の診断,治療に関連すると思われる問題点について考察する.
索引用語