セッション情報 |
ワークショップ17(消化器病学会・肝臓学会合同)
遺伝性肝胆膵疾患の病態と治療
|
タイトル |
消W17-10:遺伝性膵炎・家族性膵炎の全国実態調査
|
演者 |
正宗 淳(東北大・消化器病態学) |
共同演者 |
西森 功(西森医院), 下瀬川 徹(東北大・消化器病態学) |
抄録 |
【目的】遺伝性膵炎とは、遺伝により慢性膵炎が多発する稀な家系を指す。その発症に遺伝子異常、特にカチオニックトリプシノーゲン(PRSS1)遺伝子異常を背景とすることが多い。わが国では、Grossの診断基準を満たすことは稀であるため、新しい診断基準が策定されている(大槻班診断基準)。わが国における遺伝性膵炎・家族性膵炎の実態解明のため、全国調査を行ったので報告する。【方法】対象症例は、2001年1月から2010年12月までに受診した遺伝性膵炎と家族性膵炎とし、全国2290診療科に調査票を発送した。遺伝性膵炎の診断基準は、(a)同一家系内に膵炎患者を3名以上、2世代以上にわたり認める、(b)若年発症 (30歳以前)、(c)少なくとも1例は、膵炎の明らかな原因 (大量飲酒、胆石、外傷など)を認めない、の全てを満たす、あるいは(d)PRSS1遺伝子のp.R122Hまたはp.N29I変異陽性とした。家族性膵炎の診断基準は、遺伝性膵炎の診断基準を満たさないが、家系内に2人以上の膵炎患者がいる場合とした。本調査は厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班の共同研究として行った。【成績】平成23年末までに、遺伝性膵炎31家系(88症例)、家族性膵炎56家系(121症例)に関する回答が得られた。家族性膵炎のうち40家系(88症例)は、大槻班の診断基準に基づくと、遺伝性膵炎に分類された。家族性膵炎の多くはアルコール性であった。大槻班診断基準による遺伝性膵炎71家系のうち、49家系に遺伝子解析が行われた。PRSS1遺伝子異常を18家系(36.7%)(2家系はSPINK1遺伝子異常もあり)に認めた一方、SPINK1遺伝子異常を14家系(28.6%)(うち2家系はPRSS1遺伝子異常もあり)に認めた。【結論】我が国における遺伝性膵炎・家族性膵炎の実態が明らかとなった。PRSS1遺伝子異常に加えて、SPINK1遺伝子異常と遺伝性膵炎の関連が示唆された。 |
索引用語 |
慢性膵炎, 遺伝子解析 |