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大腸 その他

タイトル P-220:

排便障害患者の個別化医療に向けての試み

演者 宮本 英典(宮本病院)
共同演者 近清 素也(徳島大学消化器移植外科), 宮本 英之(宮本病院)
抄録 【はじめに】排便障害は頻度の高い疾患で便秘,残便感,便失禁などの症状を呈し便性状も様々である.しかし,その原因検索で行われる排便造影検査ではバリウムと小麦粉と水で作成した同じ擬似便を用いて行ってきた.さらに,バリウムを使用するため検査後の排出困難による腸管圧迫壊死,穿孔などの危惧があった.今回我々は排出困難時の危険性の少ない水溶性の消化管造影剤であるアミドトリゾ酸(ガストログラフィン)と市販の増粘剤を用いて物性(粘度と硬さ)の異なる疑似便を作成し,患者の便性状に合わせたガストログラフィン擬似便を使って排便造影検査を行い,その結果を基に治療を行ったので報告する.【方法】ガストログラフィン100mlに市販の増粘剤(つるりんこクイックリー)を(1)50g,(2)65g,(3)75g,(4)80g,(5)85g,(6)100gの6段階に分けて配合し5分間撹拌した.調整後,15分経過時の粘度と硬さをB型粘度計とレオメーターを用いて測定した.その結果を基に3パターンのガストログラフィン擬似便を作成した.排便障害患者9例に普段の便性状を問診し,近いタイプのガストログラフィン擬似便を使って排便造影検査を行った.【結果】粘度(mPa・s)は,それぞれ(1)2300,(2)6000,(3)11000,(4)14000,(5)17000,(6)39000であった.硬さ(N/m2)は,それぞれ(1)360,(2)580,(3)810,(4)1100,(5)1300,(6)2200であった.これより(1)(タイプ1),(4)(タイプ2),(6)(タイプ3)の3パターンの配合比率でガストログラフィン擬似便を作成した.タイプ1は4例,タイプ2は3例,タイプ3は2例で用いて排便造影検査を行い,直腸重積2例,直腸脱3例,直腸瘤3例,括約不全1例と診断した.その結果から選択した治療法は,腹腔鏡下直腸固定1例,経肛門直腸脱手術(デロルメ+ティールシュ法)2例,保存的治療6例であった.【まとめ】疑似便の物性を明らかにすることで,患者個人の便性状に合わせた擬似便が作成できた.この疑似便を使うことでより患者個人に合った排便指導につなげていきたい.
索引用語