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肝 その他1

タイトル P-229:

肝動脈塞栓術で治療した常染色体優性多発性嚢胞腎に合併した多発肝嚢胞の一例

演者 上嶋 弾(阪和住吉総合病院消化器内科)
共同演者 高橋 良明(阪和住吉総合病院消化器内科), 松本 大輔(阪和住吉総合病院消化器内科), 小嶋 融一(阪和住吉総合病院消化器内科), 板橋 司(阪和住吉総合病院消化器内科)
抄録 【症例】57歳女性.姉とともに以前より常染色体優性多発性嚢胞腎ADPKDと多発性嚢胞肝PLDを指摘されていた.【主訴】腹部膨満感,食欲低下【病歴】平成17年PLDによる腹部膨満感,食欲低下に対して肝嚢胞開窓術を受けたが効果は一時的であった.肝移植は患者が拒否.平成18年エコーガイド下経皮的肝嚢胞硬化療法も行い一部の嚢胞は一時的に縮小したが自覚症状は不変.その後クリノリル内服で経過観察されていたが平成24年9月再度経皮的肝嚢胞硬化療法目的で当院紹介受診.肝表面に近い比較的大きな嚢胞5か所に対しMINOによる硬化療法を行ったが嚢胞縮小効果は乏しかった.PLDに対する治療方法には肝移植,開窓術,肝切除術,硬化療法,肝動脈塞栓術TAEがあるが,開腹手術は拒否され硬化療法の効果にも限界があると考えTAEの方法,危険性,効果について十分に説明したところ強く希望したため平成25年4月TAE目的で入院.【入院後経過】術前に疼痛対策で硬膜外麻酔を行い右大腿動脈から4Frシースでapproach.上腸間膜動脈を介した門脈造影,腹腔動脈造影を施行.肝動脈が発達し併走しているはずの門脈が欠損しているように見える部分がCT上嚢胞が密集し肝実質が無いように見える部分と一致するため,右肝動脈領域の大部分と中肝動脈領域の一部に対して,無水エタノール+リピオドールのエマルジョンとマイクロコイルを用いてできる限り末梢から十分に塞栓した.術後一過性の発熱,肝胆道系酵素の上昇を認めたが回復し術後1週間で退院とした.術後4カ月の腹部CTでは肝嚢胞は縮小し肝実質が肥大,自覚症状は改善した.【結語】ADPKDに合併するPLDに対するTAEはADPKD診療ガイドにも記載されている特殊治療であるが一部の病院でしか行われていない.嚢胞領域はTAE前の70%に縮小するとされており,適応,方法や合併症について習熟した上で十分なインフォームドコンセントのもとに行うことが考慮されるべき治療法である.
索引用語